返礼品は「高級レストラン食事券」や「温泉利用券」 ふるさと納税に新たなブーム、企業のメリットとは長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/6 ページ)

» 2020年11月26日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

 ふるさと納税の返礼品といえば、牛肉や蟹のような地域を代表する高級食材をイメージする人も多いだろう。しかし、近年は「洋服仕立券」「レストラン食事券」「温泉利用券」のような“体験型”の返礼品が増えている。

 例えば、埼玉県北本市では市内にオーダースーツ「銀座英國屋」を展開する英國屋の縫製工場があることから、銀座英國屋の「オーダースーツ仕立て補助券」を返礼品として用意。2019年度のふるさと納税実績が県内4位となった。補助券は5年間有効で、5年分ためると高額なオーダースーツをお得に購入できる。

 また、“鎌倉シャツ”の愛称で知られる、メーカーズシャツ鎌倉のギフトカードは、発祥の地で本社所在地でもある神奈川県鎌倉市の返礼品で一番人気となっている。

 北海道白糠町は全国で4位、北海道2位と圧倒的なふるさと納税実績を誇る。同町は返礼品として、白糠町の食材を使ったコース料理を用意し、好評を博している。このコース料理は、日仏でミシュラン星付きレストランを多数展開するひらまつが経営する東京都内のレストランで提供している。

白糠町ふるさと納税感謝祭で提供された料理

 東京都八王子市の返礼品には、鉄板料理や懐石料理のレストランを展開するうかいのレストラン食事券が登場。うかいは、八王子市が発祥の地で現在も本社を置く。うかいの展開する銀座の店では米国のトランプ大統領が食事をしたこともある。

 渋谷区でも、渋谷スクランブルスクエア展望台「渋谷スカイ」の入場券が返礼品となっている。

渋谷区の返礼品、渋谷スカイのチケット

 兵庫県で1位の実績を持つ淡路島の洲本市では、洲本温泉の宿泊、食事、入浴の利用券を返礼品として用意するといった具合だ。

 これらの背景には何があるのか。高級食材の特産品を持たない自治体が、返礼品競争で負けないように自らの郷土の魅力を発信しようとした結果、体験型にたどり着いた側面がある。

 「わが街では、残念ながら名物和牛もいなければ、蟹も獲れない。しかし、誇るべきレストランがあるので、ご協力をお願いした」と、八王子市や渋谷区の返礼品開発担当者は口をそろえる。

 逆に、特産品が豊富にある自治体でも、体験型に魅力を見いだしている。白糠町では「白糠の食材でコース料理が組み立てられるほど、山海の幸に恵まれていることを、東京の人に実感していただける」と、宅配だけでは伝わらない、町の産業の総合力を伝えるチャンスになっていると強調する。

 返礼品を提供する企業としては、地域貢献に寄与し、売り上げも増えるメリットがある。また、「縫製職人の雇用、育成に役立っている」(英國屋・小林英毅社長)、「地域の食材を発掘できるのが大きな喜び」(ひらまつ・広報担当者)と、ふるさと納税に協力する大きな意義を見いだしている。

 ふるさと納税の新しい流れとなっている、体験型返礼品による“コト消費”について調べた。

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