富士急行は、山梨県富士吉田市に本社がある。富士吉田市は、富士山麓を中心とする郡内地方の中心地で、人口は4万6000人程度である。
そんな過疎のエリアに、富士急行は鉄道を走らせている。JR東日本の中央本線大月駅から、富士吉田市にある富士山駅へと向かい、そこで進行方向を変え河口湖駅へと向かう。延長26.6kmの路線だ。
そんな地にあるのだから乗客も少なく鉄道経営も厳しいだろう、と思う人もいるかもしれない。富士急行の営業係数は、100を切っている。しかも近年、90台から80台に入ろうとしている。営業係数とは、100円の営業収入を得るのに、どれだけの金額を使用するのかを表す指数で、100を超えると赤字になる。
急勾配の単線鉄道で、沿線人口も少ない中、利用者が多いことはすごいことだ。大都市圏の鉄道でも、路線によっては100を超えているところもあるのだから、ものすごい数値と分かるだろう。
富士急行は地域の輸送だけではなく、富士山麓エリアへ向かう観光輸送としても多く利用されている。コロナ禍までは、訪日外国人の利用も多く、駅は人であふれていた。
そんな富士急行は、東証一部に上場している。大手や準大手ではない私鉄で、東証一部に上場しているのは、富士急行と神戸電鉄だけである。ちなみにその他の私鉄でいうと、秩父鉄道はJASDAQ、広島電鉄は東証二部に上場している。
もちろん、経営自体は多角化をしている。子会社に岳南電車やバス・タクシー会社などの運輸業だけではなく、冬のスケートリンクで知られる富士急ハイランドなどのレジャー・サービス業も多くの利用者を集めている。不動産事業にも力を入れるほか、意外な持分法適用会社にテレビ山梨(なお山梨県には民放テレビ局は2局しかない)がある。このテレビ局の会長は富士急行社長の堀内光一郎氏である。
ここまでを見ると、事業に成功している地方の企業グループと映るだろう。しかし富士急行は、これら多角的事業のみならず、鉄道の魅力そのものを高め、乗客を集めることに成功しているのだ。
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