とはいえ、この不正告発を全てうのみにすることもできない。この手の検討会に、実績やノウハウがある大手企業の人間がごっそり入りこむこと自体は珍しい話ではない。筆者も、ホニャララ検討会の事務方です、なんて役人っぽい名刺を渡されたが、よくよく聞くと、実は大手企業から出向している方だったなんて経験がたびたびある。
霞が関を動かしているのは、官僚だけではなく、“官僚っぽい大企業の人”もかなりいるのだ。もちろん、それは癒着しているわけではなく、政策を実現するために、その分野でノウハウや実績のある民間の力を活用しているのだ。官僚はどんなに優秀でも、主な仕事は内部調整という事務屋にすぎないので、エキスパートの存在がどうしても必要になってくるのだ。
そのような意味では、大手ベンダーが検討会にごそっともぐり込んでいること自体はそれほど大きな問題ではない。自治体に対して「ウチらデジタル庁に関わってますから」なんてドヤ顔で語るにも、決して褒められたことではないが、自治体に対して、自分たちとの付き合いを大切にすべきだとハッタリをかました程度の話かもしれない。
と聞くと、「じゃあ、そんな怪しい話をわざわざ紹介すんじゃねえよ、人騒がせだな」と感じる人も多いかもしれないが、怪しい話だからこそ、取り上げたのだ。
もし本気で日本政府がデジタル社会をつくりたいのなら、デジタル上の内部告発や不正の指摘に対して、オープンな態度で向き合っていく必要がある。それができるかどうかがデジタル改革の成否を分けると言っても過言ではない。そのような意味で、実は今回の書き込みは非常にいい試金石になる。だから、あえてこうして皆さんにも紹介させていただいたのである。
デジタル社会と、ネット上の不正告発に対応することなどまったく関係ないと思うかもしれないが、このような問題に真摯(しんし)に向き合い、そしてオープンな形で対応することが、実はデジタルイノベーションにつながるのだ、という人がいらっしゃる。
台湾のデジタル担当大臣、オードリー・タン氏だ。
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