アイデア募集したら不正告発! 「政商」群がる? デジタル庁は大丈夫かスピン経済の歩き方(4/5 ページ)

» 2020年12月01日 08時07分 公開
[窪田順生ITmedia]

「閉じた社会の感覚」は通用しない

 しかし、残念ながら、これまで日本のやり方はまったく真逆だ。国のトップも80過ぎた派閥のドンたちが根回しをして決めていることからも分かるように、建前としては透明性の重要さを説きつつも、「大事なことほど密室で」という暗黙のルールがある。これは民間も同じだ。その代表が、これからはデジタル社会だなんだと偉そうに御託を並べるマスコミだ。

 記者クラブという完全に閉じたムラ社会の中で、いかに官僚と仲良くなって、特ダネをリークしてもらうかというジメっとした競争を長く続けてきたせいで、政府は叩いても官僚にはとことん甘い。だから、接待みたいな賭け麻雀で卓も囲むし、酔った役人からバーに呼び出されてセクハラを受けても泣き寝入りするしかない。タン氏の言う「開かれた社会でもたらされる表現の自由」と対極の位置にいる人たちと言ってもいい。

 ただ、マスコミ不信が高まっているように、そういう閉じたムラ社会を維持するのは難しくなってきた。「時代」が大きく変わってきているからだ。例えば、筆者が報道対策アドバイザーを本格的に始めた12年ほど前、企業危機管理のセオリーとしては、ネット掲示板やSNSなどに書き込まれる内部告発は、「スルー」が正解だった。

 ネットは、誰が書き込んだものかも分からないし、情報の信憑(しんぴょう)性も疑わしいので、まともに対応したらややこしい事態を招くだけ、という「守り」の考え方である。もしマスコミから問い合わせが来てもすっとぼけるか、「そのような情報がネット上にあることはこちらも承知しておりますが、事実を関係を含めて確認中です」とやりすごすと相場が決まっていた。2020年では炎上必至の悪手だが、当時は多くの大企業がそうしていたのである。

 しかし、もはやそういう「閉じた社会の感覚」は通用しない。SNSでバイトが炎上しても、企業が謝罪コメントを出さなくてはいけなくなったし、SNS上で不正が告発されるようなことがあれば、何かしらのアナウンスをしなくてはいけなくなった。デジタルによって社会が開かれていくにつれて、「ムラ社会の常識」が完全に「非常識」となったのである。

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