運賃「往復1万円」はアリか? 世界基準で見直す“富士山を登る鉄道”の価値杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)

» 2020年12月04日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

富士急行の4倍の運賃だがユングフラウの半額

 富士山登山鉄道は富士スバルラインを置き換える形で建設される。最も有力な方法はLRT(次世代型路面電車)だ。道路併用軌道とすれば消防、救急、警察などの緊急用自動車の通行も可能になる。もちろん鉄道に支障がある場合のバス代行も可能だ。

富士山登山鉄道構想検討会の検討ルート。Aルートは富士スバルラインを流用、Bルートは1〜3合目の拠点からケーブルカーやロープウェイで短絡する(出典:山梨県)
最終候補の比較(出典:山梨県)

 その富士スバルラインの距離は片道約30キロだ。この距離で鉄道運賃を比較すると、JR東日本の幹線では510円。大手私鉄では400円前後となる。地方鉄道の相場はもっと高く、近隣の富士急行の最長区間は大月〜河口湖間26.6キロで運賃は1170円になっている。それでも富士山登山鉄道の運賃は4倍を超える。

 往復1万円、年間300万人で年間収入300億円とは、いかにもどんぶり勘定のような気がする。理事会でも「維持管理費などを含めた予測が粗い」という指摘があった。ただし、報道を見る限り「運賃が高すぎる」という意見の記述は見当たらない。

 そのような意見があるか否かは、富士山登山鉄道構想検討会の公式サイトに議事概要が掲載されるまで待たなくてはいけない。しかし運賃は利用者の大きな関心事であり、運賃について報じられないとなれば、往復1万円については異論がなかったと思われる。なぜなら、国際的な視野で見れば、これでも安いくらいだからだ。

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