なぜ石川県の加賀温泉郷に人が集まるのか 「ファンづくり」の裏側モーニング娘。を起用(2/6 ページ)

» 2020年12月05日 07時51分 公開
[後藤香織ITmedia]

限られた予算の中で

 約10年にわたって加賀温泉郷のプロモーションを手がけている大久保氏。プロモーションを始めた11年当時の加賀温泉郷は「2015年の北陸新幹線開通までもたないのではないか」というほどの停滞感があったという。

 その中で大久保氏は、当時連日のように音楽番組やワイドショーをにぎわせていたレディー・ガガをもじり「Lady Kaga」というプロモーションを提案。その際は反対されたというが、うまくいく予感があったことから説得を重ね、なんとかこの企画を決行した。その結果、限られた予算の中で作ることができたのは動画とポスターのみだったが、いわゆる「バズり」を起こし、すべてのキー局や新聞社から取材が殺到し、観光庁長官の表彰を得た。そこから毎年のプロモーションを担当している。

レディー・ガガをもじった「Lady Kaga」

 加賀さんを起用した加賀温泉郷のプロモーションが特徴的なのは、ただ単に広告ビジュアルにアイドルを起用するだけでなく、かなりアイドルファンの文化や心情に寄り添い、ファン心理をくすぐるような企画を展開していることだ。

 大久保氏の中では「発起人はモーニング娘。ファンだというリスペクトがあります」という意識が一貫している。例えば、最初に加賀さんを起用したビジュアルが出たのは「#加賀四湯博2018」のパンフレット。使用する写真は「ナチュラルなかわいさを求めるファンが多い」ことをくみ取り「本人の素っぽさだったり、素材の良さが出るものを意識して作りました」とファンが求めるものを意識した。

 この配布時期など細かな点についても意識を巡らせ「せっかくだったら初出しは、モーニング娘。のコンサートでサプライズで配ったほうが喜んでいただけるんじゃないか」と感じ、本当はもう少し後だった予定を前倒し、18年5月26日に開催された石川・金沢本多の森ホールでの公演で入場時に配布を行った。

 また、モーニング娘。を擁するハロー!プロジェクトが展開しているグッズに「フィギュアスタンドキーホルダー(通称FSK)」と呼ばれているものがある。これは近年各界隈のアイドルや漫画・アニメ好きの間で話題の「アクキー」ことアクリルキーホルダーのこと。ただコレクションしたり飾るだけではなく、持ち歩いて食事や風景とともに写真を撮ってSNSにアップして楽しむ文化が広まっている。

このように風景などと一緒に撮影するのが流行している(画像提供:かいねや加賀)

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