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» 2020年12月09日 07時00分 公開

その名はModel-T:2000種類の商品をVR遠隔陳列 ローソンが導入した“ロボット店員”がつかむ未来 (1/2)

9月に開業した東京ポートシティ竹芝のローソンでは、遠隔操作ロボットが商品を陳列している。2000種類の商品をどうやってつかんでいるのか。

[房野麻子,ITmedia]

 9月に開業した東京ポートシティ竹芝。その一角に、遠隔操作ロボットが商品を陳列する「ローソン Model T 東京ポートシティ竹芝店」がある。ロボットは、Telexistence社(テレイグジスタンス、TX社)が開発した小売り店舗用の「Model-T」だ。店舗はTX社の子会社が直接、加盟店オーナーとして運営している。

 ロボットによって、少子高齢化や就労人口の減少による人手不足といった社会課題解決に貢献することを目指す。ファミリーマートでもModel-Tの試験運用が行われており、来年には本格導入される予定だ。Model-Tの特徴、目指すところについて、TX社の富岡仁CEOに話を聞いた。

2000種類の商品をどうやってつかむか

 一般に商品陳列業務は、コンビニの全業務の2〜3割、スーパーだと4割近くを占めるという。東京ポートシティ竹芝店では、VR端末を装着したスタッフがModel-Tを遠隔制御し、商品を陳列している。Model-Tが並べているのは、売上に占める割合が多い弁当や飲料だ。

 店舗に配達され、所定の場所に置かれたパレットをロボットが取りに行き、自ら運んでバックヤードで陳列する。来年からは店舗内での陳列も行う予定だ。通信はWi-Fiで、内蔵するバッテリーか有線給電で動く。

photo おにぎりやペットボトルをつかんで陳列するModel-T=Telexistence社の動画より
photo VR端末を装着したスタッフが遠隔操作している=Telexistence社の動画より

 Model-Tが陳列を担当している商品は約2000種類。形状が異なるものは、200以上もある。これらの商品に対し、1種類のロボットハンドで対応するために、「機械工学的にどのようなロボットハンドを作らなければいけないか」という洗い出しに苦労したという。富岡氏は「200もの形状のために200種類のつかみ方ができる手なんて作れません」と指摘する。

 産業ロボットでは、つかむものに対してロボットハンドを丸ごと変えるアプローチを採ることが多い。「それだとハンドを取り換える時間も含めて、時間がかかりすぎます。あくまでロボットハンドは変えずに、手の動かし方でつかみ方を変える機械をどう作ればいいのかを考えています」

 実は、つかむことが難しいものは「特にない」そうだ。富岡氏は「ある一つのものに特化したハンドを作るなら、いくらでも作れます。どちらかというと、1種類のハンドでどれほど異なる形状の商品をつかめるようにするかの方が難しいです」と話す。

 Model-Tは、コンビニの狭い店舗内でも陳列作業を行えるよう、ロボットの胴体、アームに22自由度の関節を搭載している。関節と関節の間の長さ(リンク長)についても、無限の組み合わせの中から、一番効率的なものを選んでいかなくてはならない。「そんなことをやっているロボットメーカーは、この世にないと思います。挑戦しないと分かりませんし、難しいです」

photo Telexistence社のニュースリリースより

 通信の遅延も課題だ。遅延が多いと“VR酔い”してしまう。「だいたい200ミリ秒を超えると、操作している人がVR酔いになってしまいます。200ミリ秒以下でも遅く、やはり100ミリ秒以下に抑えたいです。われわれは伝送する映像のコーデックも内製していて、KDDIと協力して行った映像伝送では、最速55ミリ秒を達成しました。VR用の3次元の映像伝送で60ミリ秒を切るというのは他にないと思います」

 それでも、一連の動作で映像をやりとりしていると、ほんの少しの遅延でも積み重なれば操作に影響を与えるほどになる。1ミリ秒の超低遅延を実現する5Gには大きな期待を抱いているという。

機械学習で、軌道計画の自動生成を目指す

 ロボットはインターネットがあればどこからでも操作できるが、現在はTX社のオフィスから遠隔操作している。現時点ではテスト段階なので、ロボットを動かすときは操作を担当する人間が張り付いて動かしているが、最終的には遠隔操作ではなくて自動化する計画だ。

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