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独自で強い仕事のために、「客観を超えて主観を持て」偉大な事業家は(1/4 ページ)

» 2020年12月19日 08時00分 公開
[村山昇INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:村山昇(むらやま・のぼる)

キャリア・ポートレート コンサルティング代表。企業・団体の従業員・職員を対象に「プロフェッショナルシップ研修」(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)を行なう。「キャリアの自画像(ポートレート)」を描くマネジメントツールや「レゴブロック」を用いたゲーム研修、就労観の傾向性診断「キャリアMQ」をコア商品とする。プロ論・キャリア論を教えるのではなく、「働くこと・仕事の本質」を理解させ、腹底にジーンと効くプログラムを志向している。


 「それって主観的な見方だよね。もっと客観的にながめないと……」。

 ビジネス現場のやりとりでは、よくこんなフレーズが出てきます。このことは暗に、客観が主観より優れていることをにじませているようです。しかし、はたしてそうでしょうか。

 主観と客観は哲学的に(特にフッサールを中心とする現象学の分野で)議論を始めると、とても難解な概念になっていきます。本稿ではそうした次元にはあえて入らず、普段の生活や職場において「主観的に考える/客観的に考える」とはどういう態度であるのかをおおまかにつかみ、よりよい仕事を生み出すためのヒントを得ていきたいと思います。

 考えることは、知・情・意にまたがる広範で複雑な作業です。時に正確に分析し、時に熱く受け取り、時に固く信じる。そういった複雑な混合によって思考は生まれます。その物事が何であるかをとらえる思考には、いやおうなしに個別志向性があります。生きる環境や教育、経験、性格などの違いがそうした思考の傾向性やレベルを決めていきます。

 主観的に考えるというのは、まさにこの個別志向性にまかせて物事をつかんでいこうとする態度です。言うなれば「地のままに考える」で、そこに感覚的な把握や評価が入っていたり、信条的な判断が入っていたりしてもよいものです。

 それに対し、客観的に考えるというのは、各人が個別に持つ傾向性を抑え、感情や勘といった不安定なものを排除し、その物事自体を冷徹に認識しようとする態度です。そして、できるだけ多くの人が共通了解できそうなとらえ方を目指します。そこでは必然的に分析的・論証的な思考となります。客観的な思考の最たる例は、一般化できる法則を追求する科学です。

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