”条件外の人”でも運命を感じた! 政府支援の「AI婚活」、その実力は?救世主(2/5 ページ)

» 2020年12月26日 08時19分 公開
[小林香織ITmedia]

【愛媛】ユーザーの行動履歴を解析

 少子化対策が最重要課題の愛媛県では、08年に婚活事業を開始。自治体ではいち早く、16年2月からAIマッチングを稼働させ成果をあげたことから、18県が愛媛をモデルケースとしている。

 AIを採用した背景について、「従来の条件マッチングでは交際に至らない方があまりにも多かった」と、えひめ結婚支援センター事務局長の岩丸裕建氏は言う。

 多くのマッチングアプリや結婚相談所では、年齢、身長、年収、結婚歴の有無といった条件でフィルタリングして、検索結果に表示された候補者たちのプロフィールを見て、「いいね」やメッセージなどを送るのが一般的だ。愛媛県も同様のシステムで運営していたが、思ったような結果は出なかった。

 同県のAIシステムは、「ユーザーの行動履歴」に紐(ひも)付いて機械学習している。

 Aさん(女性)がBさん(男性)にお見合いの申込みを行うと、Aさんは「過去にBさんを選んだ女性たちのグループ」に仲間入りする。そして、Aさんが属するグループの女性陣が選んだ男性たちが、「Aさんの好みかもしれない男性グループ」としてリストアップされる。同時に「Aさんが属する女性グループを好む男性グループ」も検出、2つの男性グループのどちらにも属する男性が、Aさんにレコメンドされる仕組みだ。

えひめ結婚支援センターによる「ビッグデータを活用した婚活」の紹介動画より

 自分と好みが似ている人の同性グループ、自分と似た人を好む異性グループ、2種類のグループをかけ合わせ、AIが「条件外でも両思いになれそうな人」を手繰り寄せるのだ。ただし、自分から申し込み依頼をする、あるいは申し込まれてお見合いをしなければデータはたまらないため、このAIマッチングを有効活用するには積極的な行動が求められる。

 AIマッチングの導入前、同センターの交際成立の割合は13%だったが、活用から約5年経過した20年現在は32%まで上昇。岩丸氏によると「AIを導入してから、条件外の相手でも交際が成立する事例は確実に増えている」とのこと。

 AIに加えて、キューピッドを担うボランティアの存在も交際成立の追い風となっているようだ。

 「いわゆる世話焼きおばさんのように、2人の背中を後押しするのがボランティアのみなさんです。当社にはボランティアの育成システムがあり、彼らはデートの行き先からメッセージの返信まで、リモートで相談に対応しています」(岩丸氏)

 今後は、ユーザーの動画や声、においといったデータも含めることで、さらなる交際率向上を目指したいと意気込む。

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