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求められる「要約力」 いかに短い言葉で人を動かすか 組織の日常のコミュニケーションで育む「書く力」(2/2 ページ)

» 2021年01月19日 07時00分 公開
[リクルートワークス研究所]
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小池 140文字という限られた文字数で言いたいことを伝えるには、構成と表現の勝負となります。そのように考え抜いた投稿は分かりやすく、読み手の腑に落ちやすいのでしょう。だから、心に残るし、コメントも書ける。内容だけの問題ではなく、文章は構成力なのだと、こういうときに思います。

曽山 私は、発信をすることは3つの「カン」から学びがあると考えています。共感・反感・無関心。最初に発信し始めた頃には、共感と反感かな、と思っていたのですが、自分ではすごくいいことを言っていると思っても無視されることがあって、関心がないという反応があることも分かりました。“いいね”の数だけを競っても意味はありません。ただ、人々が何に共感して、何に反発して、何に関心がないのか。自分の考え、言葉はどのように人の心を動かすのか。1000発信すれば、1000の学びがあると思っています。

 先ほどの日報でも、先輩たちの反応によって、表現力がどんどん上がる社員がいます。どうすればレスポンスがあるのか、真剣に考えるようになるからです。

小池 そうやってアウトプットによって、曽山さんは思考を整理しているのですね。アウトプットすれば必ずレスポンスがあります。私自身、本を書くとき、SNSのやりとりによってネタを拾って、そのネタが人の心に刺さるのかどうか確かめて、内容を深めるということをよくやるのです。つまり、アウトプットは結局、他者の意見をインプットするためのツールであり、自分のクリエイティビティを育てる循環だといっていいと思います。

問い3 書くことの心理的なハードルをいかに下げるか

曽山 一方で、社員が特に社外に向けて発信することにリスクを感じないのかという質問を受けます。これは、役員会で何度も議論しました。結果、社名や実名を出す場合には、会社の代表として発信するという考えを共有しました。とはいえ、できるだけ発信してほしいですから、私が社員に必ず言うのは、「そんなに心配するほどみんな君の投稿を見てないから大丈夫だよ」ということ。そうやって背中を押すのです。

 それでも注目されて、期せずして炎上してしまうことがあります。炎上してもその人が真面目に考えたこと、事実を発信したのであればもちろんおとがめはありません。

小池 自分はここで書いていいんだ、という感覚はとても大事ですね。

曽山 大きく炎上した案件では、本人が不安を感じているので、人事部に呼ぶことがあります。本人は「申し訳ありません」と謝りますが、「内容は問題ないから削除もしなくていい」とまず伝えます。そのうえで、「よくこれだけ炎上したね、どうやって書いたの?」と聞き、本人の真剣な気持ちがちゃんと伝わってくれば、「そのまま胸を張って出しておきなよ」と言ってあげます。本人にとっては、発信したこと、炎上したことが否定されないことで、その経験が財産となります。人を動かすパワーを学んでいることになるのです。

小池 周囲の“大人”は、書くことの障壁を取り除くという役割を担っていると思います。まずは恐れず書く、表現してみて他人からリアクションを受ける。すると、自分の言葉によって誰かが喜ぶ、傷つくということが理解できます。それは、コミュニケーションの学びになるのです。

 本記事は『Works』163号(2020年12月発行)「組織の日常のコミュニケーションで育む/

サイバーエージェント 曽山哲人氏 × 河合塾講師 小池陽慈氏」を一部編集の上、転載したものです。

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