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» 2021年01月22日 07時00分 公開

デジタル時代の人材戦略、3つの実践ポイント いかに組織を変革していくかデジタル時代の人材マネジメント(1/2 ページ)

デジタル化に向けた人事・人材戦略や制度が明確になっていても、それらを実現できる組織をどう作っていくかは、さらに重要な課題となる。今回はデジタルトランスフォーメーションの「トランスフォーメーション」の部分、つまり「いかにして組織を変革していくか」について取り上げていく。

[横内慧一,ITmedia]

 前回までは「デジタル時代の人材戦略の在り方」を人材育成体系・処遇制度基盤の両面から論じてきた。

 一方でデジタル化に向けた人事・人材戦略や制度が明確になっていても、それらを実現できる組織をどう作っていくかは、さらに重要な課題となる。今回はデジタルトランスフォーメーションの「トランスフォーメーション」の部分、つまり「いかにして組織を変革していくか」について取り上げていく。

photo 写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

ポイント1:人事課題を経営課題として捉え、トップが明確にコミットする

 多くの日本企業は人事課題を経営課題としては捉えずに、人事部門が取り組み、解決する課題というスタンスを取ってきた。そして高度経済成長期に作り上げられた終身雇用・年功序列・職能等級といった日本特有の人材戦略を外部環境の変化に応じて少しずつ改善を重ねてきた。

 しかし、デジタル化により外部環境が急激に変化している現在、変革の実現性をヒトの面から担保する人材戦略の重要性は高まる一方だ。同時に、求められているスピード感も極めて早い。そのような状況下では、トップが人材戦略を人事部長や人事担当役員に丸投げし、報告を受けるやり方は通用しない。

 トップや事業系役員も含めて人事・人材戦略を議論する場が必要である。従来のように人事担当役員や人事部長が経営会議に持ち込み、各役員からの各論の指摘を受け修正し、承認を得るやり方では、事業変革の実現性を確保できない。事業系役員も巻き込みながら、役員層で「事業変革の方向性に則した人材戦略」を議論すべきである。

 そして事業系の役員を巻き込む上で最も重要なのは、トップが人材戦略に対して自身の思いを持ち、コミットメントを明確にすることである。会社によっては本社機能よりも事業部門のパワーが強く、本社機能側のみの意向で経営課題として取り上げるのが容易ではないことが多い。このため、トップが人事課題を経営課題として取り扱うと宣言することが大切だ。

ポイント2:役員層でありたい姿を描く

 2019年6月に実施したNRI「VUCA時代の経営に関するアンケート調査」でも、そもそもデジタル化によって「何を目指すのか?」といったビジョンが不明確であることが、多くの企業(経営企画担当役員や部長)の問題意識として挙げられている(回答全体の41.5%を「そもそもデジタル化で『何を目指すのか?』といったビジョンが不明確」という回答が占めている)。自社の事業面でのありたい姿と人材戦略を照らし合わせながら、どうありたいかの方向性を策定し、トップと役員陣で共通認識を持つことが求められる。

ギャップアプローチからポジティブアプローチへの転換

 デジタル化によりゲームルールが大きく変化していく中で、現状の延長線上の積み上げ式の議論をしていては事業競争力強化につながる人材戦略の策定は困難である。

 このように「現状の延長線上の与えられた要求水準に対して、問題を特定し、原因を分析し、解決方法を検討し、解決に向けて実行する」という思考法はギャップアプローチと呼ばれるが(図表1)、このアプローチは既知のものを効率的に実行し結果を出す際には有効で、特に勝ちパターンが既にある程度分かっているもの、改善が重要であるもの等、問題や対応策が明確にできる場合に価値を発揮する。

photo (図表1)

 一方、デジタル化は新しいビジネスモデルや業務プロセスの抜本的な改革となり、人材マネジメントにもパラダイムシフトを求めるため、ギャップアプローチでは限界がくる。与えられた要求水準と現状のギャップからくる問題ばかりに目が向くため、must(●●をしなければならない)やshould(●●をすべき)という思考になりがちであるし、mustやshouldが主体のコミュニケーションが組織に広がることで、組織全体に“やらされ感”が生まれやすい。人材戦略策定時にギャップアプローチの考え方のままで、現状に過度に引っ張られた改善方針ができ上がっているケースや、人材戦略を実行に移した際に閉塞感が生まれ勢いが萎んでいくケースが生じている。

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