コラム
» 2021年02月01日 07時00分 公開

社員の健康推進「予算がないから後回し」では済まない! 必要な予算は総務が作り出す最終回・総務プロの「攻めと守り」(2/2 ページ)

[金英範,ITmedia]
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 例えば重要10項目の中でも、特に「人間の五感」に関するものが総務としては一番推進しやすい事項でしょう。コロナ禍で注目度が高まった空気・温熱環境(換気)だけでなく、「光」「食」「音」なども、効果が高く実践しやすいです。

photo (図4)WELL認証の例(シルバー)=米IWBIの資料より

 (図5)には、筆者が自らの総務の経験や最近の情報をもとに、総務が実行できるWell-being施策の具体例を、製品情報も含めて挙げています。

 これらのサービス導入には、予算を組む必要がありますが、おおかた「1人当たり、年間1万〜2万円」となることが、実際に業者の見積もりを取ってみると分かると思います。つまり、前述の社員1人当たり10万円の予算(ハード系コストの削減から発生した、OPEXベースラインの予算)によって、5〜10種類の施策を具体的に実践できるのです。

 総務のアクションとしては、まずはWell-being項目に沿って、関連するサービスを展開している業者をリスト化し、それぞれの見積もりを取ってみることからスタートできます。アクションあるのみです。

photo (図5)社員のために総務が活用できる、Well-being関連のサービスやツールの例=筆者作成

 誌面の都合上、その全部を紹介するのは難しいですが、例えば「空気環境」という側面では、浮遊ウイルス・菌を不活性化するという空気清浄機「ピュアウォッシャー」(クボタ)なども効果的です。強力な分、騒音が気になるかもしれませんが、人々が密集してシーンと仕事をしているオフィスが、今後も存続するとは限りません。

 オフィスに来る目的もコラボレーションやディスカッション、集いが目的となるなら多少の空調音も、例えば「オフィス内音楽」で解消できます。そのように音環境(リラックス)と空気環境(健康)を達成するオフィスをどう考えるか、総合的に実践することが「攻める総務」の役割です。

Well-beingへ投資する「攻める総務」が必要

 今まではこうした努力を、予算制限により「後回しにする」もしくは「皆ガマンしているから、文句を言わない」といった、考えが残っている会社も多くありました。果たしてニューノーマルにおいて、このような感覚の会社が生き残っていけるでしょうか。

 基本的な10の要素はハードルが高いわけでもなく、働く人が享受する当たり前の権利です。それらを後まわしにしながら、一方で「優秀人材を獲得したい」というのは本末転倒でしょう。

 GPTW(Great Place To Work:働きがいのある企業の世界ランキング)で上位に入る企業、例えばセールスフォースやモルガン・スタンレーなどは、Well-beingな環境を当たり前に整えている企業です。地道な努力によって、GPTWでの上位を維持しているのです。GPTWの上位ランキングに日本企業の名前がほとんど見受けられないことに、筆者は大きな憤りと焦りを感じます。働く環境に全くといっていいほど、施策を打ってこなかった代償ではないでしょうか。

 それでも競争社会の中で、日本企業はそれなりの力を発揮できている部分もあります。逆にいうと、日本企業が本気でWell-being施策を推進していたら、グローバル競争に勝てる「次の一手」があったかもしれないという見方もできます。どのように見るかは、その会社にもよりますが、筆者は明らかなチャンスと見ます。無駄(全部ではないですが)が多かったオフィスコストを見直し、Well-beingへ投資する「攻める総務」が必要です。世界の優秀人材を引きつけるためには必要条件となります。

 シミュレーション上では、このように総務サイフを削減、人事予算への振り替えという計算はできますが、実際には多くの企業には“部門間の壁”が存在します。なかなか「総務」「人事」「テクノロジー部門」が総合的に、このような予算移管まで突っ込んで議論し、経営判断までスピーディに持っていけるケースは少ないでしょう(いわゆる大企業病)。

 総務が削減したオフィスコストを、総務系の役員や一部キャリアの成果としてしまい、単なる削減となるケースも多いです。これは社員にとっては最大の不幸ということです。働き方改革の主役である社員が苦労している最中に、経営陣はコスト削減で満足して良いのでしょうか。

 そこで、経営陣によるトップダウン改革が求められます。プロジェクト組織(リーダー)を任命し、権限を与えて推進するのです。これらをスピーディに推進できる企業が、優秀人材を引き付けられるでしょう。会社の生産性を上げる面でも効果があり、リモートワークで成果がなかなか上がらない社員(個人差があって当たり前)に対しても、ストレスを低減させ、徐々に成果を上げていく好スパイラルを演出できるはずです。

 最後に「攻める総務」を本気で実践したい皆さまへ。

 本連載を通じ、従来の「固定費」と思われてた不動産コストが働き方改革により、今後どんどん「動く」ことで、多くのサービスを一気に取り入れられる──ということをご理解いただければ幸いです。

 皆さまの個々の努力、「攻める総務」が作り出した予算シフトにより、市場が大きく動くのです。市場が動けば、選択肢もどんどん増えてきます。デジタル変革(DX)、そして社員の健康的なワークライフを考える“本気の予算活用”が進み、社員が潜在能力を発揮でき、日本企業がGPTW世界ランキングで上位に進出することを筆者は祈っています。

 第1回〜6回まで、ご購読いただきありがとうございました。皆さまの企業の今後のオフィス戦略から総務のDX戦略、社員のための健康戦略を応援いたします。筆者が代表を務めるHite&Co.としても、そのような戦略策定・実践プロジェクトの立ち上げをお手伝いさせていただく機会があれば、ぜひお声がけください。

 これまでの連載(第1回〜5回)はこちらから。

著者紹介:金英範

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 株式会社 Hite & Co.代表取締役社長。「総務から社員を元気に、会社を元気に!」がモットー。25年以上に渡り、日系・外資系大企業の計7社にて総務・ファシリティマネジメントを実務経験してきた“総務プロ”。

 インハウス業務とサービスプロバイダーの両方の立場から、企業の不動産戦略や社員働き方変化に伴うオフィス変革&再構築を主軸に、独自のイノベーティブな手法でファシリティコストの大幅な削減と同時に社員サービスの向上など、スタートアップから大企業まで幅広く実践してきた。

 JFMAやコアネットなどの業界団体でのリーダーシップ、企業総務部への戦略コンサルティングの実績も持つ。Master of Corporate Real Estate(MCR)認定ファシリティマネジャー、一級建築士の資格を保有。


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