コロナ禍で崩壊する「日本式・壁ビジネス」 改革途上の地銀が「統合」だけでは乗り切れなさそうなワケカギは「付加価値型」へのシフト(3/4 ページ)

» 2021年02月22日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]

 ここまでの考察を踏まえるなら、仮に地銀同士が統合しても、旧来の壁頼りな「預貸ビジネス一本足打法」では、根本的な問題解決にはならないと思われます。解決策はズバリ、証券会社、メガバンクと同じく壁ビジネスからの脱却、自立型ビジネスモデルへの転換以外にはない、と考えます。

 メガバンクのように海外に活路を求められない地銀の実情を踏まえれば、生き残り策のヒントはむしろ先の証券会社にあるといえます。アドバイザリー業務をメインとして収益化するビジネスモデルに転換し、預貸業務は付随業務に落とし込んでいく――すなわち「経営アドバイザリーが主業ですが、おカネも貸します」的な立ち位置です。このような立ち位置へとシフトしていかないと、地銀は時代遅れな仲介事業者として、そのまま滅んでしまうのではないかと思うのです。

 その意味では、金融庁が数年前から地銀に対して言い始めた「事業性評価に力を入れよ」という流れは、至極正しいといえます。返済重視の決算書分析と保全に依存した融資ビジネスから、成長戦略を顧客と共に描きつつ、融資に応じるビジネスへの転換という事業性評価の考え方は、急激なデジタル化の流れへの対応とも呼応するように思えるのです。

 一部地銀で活発化している証券会社との提携による手数料収入増強策は、しょせんは仲介事業です。地銀の未来像はそこにはないでしょう。急速なデジタル化で変わる時代において、地銀の非仲介路線での自律型モデルへの転換は、本業の延長線上にある事業性評価のビジネスモデル化以外にはないと思うのです。

 もちろん、現状の地銀が、企業コンサルティング業務といえるこの事業性評価のビジネスモデル化を即座にできるのかといえば、決して容易な話ではないでしょう。まずはコンサルティング会社との提携によって全面的に専門家の力を借り、サービス提供とコンサルタント人材教育を手始めとしてビジネス化を進めるべきです。長い目で見れば、証券会社との提携で今なお仲介業者として目先の利益を追うよりも、よほど有効かつ有益であると考えます。

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