「昇格機会は多い方がいい」「優秀な現場でOJT」──なぜ失敗? 良かれと思った人事施策の落し穴人事施策のよくある誤解と失敗例(2)(1/2 ページ)

» 2021年02月25日 07時00分 公開
[南野真彦ITmedia]

 あらゆる人事施策には、メリットとデメリットがあります。他社にとっては良い施策でも、自社で導入してみると合わなかったということも起こり得ます。本連載では、筆者のコンサルティングの経験から人事施策に関するよくある誤解と、その原因や対策について事例を交えてお伝えしています。

 今回は、等級・役職に対する「昇格機会は多い方が良い」という誤解と、OJTに対する「優秀なプレイヤーの背中を見て学ぶのが良い」という誤解を解説します。

画像はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

等級・役職に対する誤解〜電気工事業D社の事例〜

 1つ目は、等級・役職に対する誤解を紹介します。

 D社は電力会社や鉄道会社の業務を請け負っている約200人の企業です。設立後、社員数が少ないうちは、社長の裁量で全員の処遇を決めていました。20年ほど前、規模の拡大に伴い、取引先である電力会社の人事制度をまねて、等級制度を導入しました。

 社員数が大手とは異なるため、11段階ある等級の数を減らすことも検討しましたが、経営陣の「ステップアップできる回数が多い方が、社員のやる気向上につながるのではないか?」との意見もあり、等級数を変更せずにそのまま導入しました。

 また、役職についても同様の考えから、部長・次長・部長代理・支店長・所長・店長・支店長代理・副店長・課長・課長補佐・係長・主任・班長──とさまざまな肩書を作りました。

 しかし、社員へのアンケートやインタビューを実施した結果「人事制度がやる気につながっている」という声を社員から聞くことはなく、むしろ不満につながっているようです。

 「等級・役職の数を多く設定する」→「ステップアップができて、社員のやる気が高まる」→「業績や社員のパフォーマンスが上がる」という効果を狙っていたにもかかわらず、そうならなかったのは、一体なぜでしょうか?

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