これまでのように新車を購入し、取得税(19年に環境性能割に移行)や自動車税、重量税、消費税、ガソリン税といった税金を毎年のように納め、車検数回でディーラーから買い替えを促され、ユーザーはクルマへと大金を注ぎ続けてきた。
こうした中で、ディーラーの大きな収益源となってきたのが車検だ。クルマのメンテナンスフリー化が進んだ一方で、車検制度はほぼそのまま維持されており、新車から3年、それ以降は2年に1度の車検を取得すると同時に点検整備も請け負うことは、ディーラーの収益を支えてきた。しかし、そんな車検ビジネスも見通しは明るくない。
最盛期には年間500万台(1990年)の新車が登録されたが、今や新車登録台数は430万台にまで減少してしまった。さらに、クルマの耐久性、信頼性が向上したために、車検整備にかかる費用も減少傾向にある。格安車検などをうたうユーザー代行車検や専門の民間車検場も登場したことで、ディーラーへの足は遠のき、新車への買い替えサイクルも延びることにつながっている。
車検制度の見直しも始まることになるのは確実だ。現在では陸運支局や検査場の人員も慢性的な人手不足であり、抜本的な効率化が求められる。いずれクルマの登録制度にもマイナンバーがひも付けられるだろう。車検に関係なく税金の納付が促されることで、車体の電動化やカーシェアリングの普及と併せて、車検制度が簡素化されることになるだろう。
あるいはカーシェアリング利用者にも、自動車利用税などの新たな課税制度を設けることも想定できる。なぜなら車検制度の一番の目的は確実な税収だからだ。カーシェアリングが主流になった途端、レンタカーやカーシェア用の車両の税負担はグンと増やされることになるはずだ。
これまでもディーラーのビジネスモデルは時代によって変化してきた。60年代の高度成長期はディーラーも黎明(れいめい)期であり、店舗数や人員を増やすほどに販売台数も伸びていった。途中オイルショックという障害もあったものの、バブル期に向けて台数ベースでも、売り上げベースでも右肩上がりに伸びていった。
そして販売したクルマ自体の売り上げによる収益だけでなく、目標台数をクリアすることで支払われる販売奨励金という名のボーナスがディーラーの収益になっていく。
しかし、近年では一部のブランドでそれが激化する傾向にあった。販売台数の首位を争うための自車登録が、輸入車や軽自動車業界で常態化しているのだ。ディーラーに対して自車登録を強要していたとして、先日、BMWには公正取引委員会の調査が入り、自ら改善案を提出するなど、販売業界のゆがみが露呈する事態になっている。
ディーラーの存在価値、それをずっと模索し高めてきたのが、この20年ではないだろうか。しかし、このところのコロナ禍、そして環境対策としての電動化推進は、クルマの需要を大きく揺さぶり、これからのディーラーの在り方を変えようとしているのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング