伝統と格式の御三家と、拡大してきた「外資VS.内資」といった勢力の構図をみてきたが、1つ確かなこととしていえるのは“新しいホテルは快適”ということだ。
伝統や格式と快適性は異なる次元のワードであるが、身を置きステイする施設としてのホテル故、ゲストにとって新しいハードは大きな魅力である。それもデラックスなホテルとなれば尚更だろう。
ところで、滞在の快適さを左右する1つの指標は客室面積といえる。高級ホテルになればスイートルームのような広大な客室を有するものであるが、ここで指摘したいのは一般的に利用されるような標準的客室の面積である。
御三家のスタンダードルームの客室面積例をみてみよう。
一方建て替えたThe Okura Tokyo(旧ホテルオークラ)は、48平方メートルと建て替え前と比較して大いに広くなっている。
他方、外資系ホテルの客室面積も確認してみる。
リッツカールトンにおいては、御三家のダブルスコア近い広さを確保している。これも新たなコンセプトに沿って建造された新築のハードだからこそ実現できる芸当だ。
とはいえ客室面積という点だけに着目すれば、壁をぶち抜くといったリニューアルで広げることは不可能ではない(現にそうした例もある)。一方、天井高となればハードルは高そうだ。いずれにしても小手先のリニューアルで外資と張り合うのはなかなか難しいことがうかがえる。
客室面積を1つの例として取り上げたが、このように近年の外資系ラグジュアリーホテルの進出は「ラグジュアリー」という定義そのものを変容させてきた。新生オークラの例のように、帝国ホテルが新たなハードとして誕生するならば客室面積も相応なものになるはずだろう。無論、客室面積がホテルそのものの格と直結するものではないが、大きな指標ということは確かだ。
近年の東京ホテルシーンについて、外資VS.日系という構図を指摘してきたが、あくまでも総体的にみた傾向ということであり、ホテルやチェーン個々別々では多様なケースがあることは言わずもがな。いずれにせよシティーホテルやビジネスホテルに限らず「いくらリニューアル・リファインを施しても“ガラガラポン”には敵わない」。とあるホテル経営者の言葉であるが、伝統と格式、文化的価値と、ハードの親和性をどこまで追求できるのかは注目されるだろう。新たなホテル開発は日本人特有の美学と国際観光都市への発展の落としどころを探る試金石でもある。ホテルは都市の文化的成熟度の指標でもあるのだ。
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