今回のマイナーチェンジは、エンジンのパフォーマンスアップが目的で、しかもソフトウェアのみの変更しかない。それだけ燃焼の制御に関する熟成が進んだということだが、これはマツダの社内でテストするだけでは、とても実現できなかった。
一昨年SKYACTIV-X搭載車を発売したことで、各オーナーの走行データを集めることができるようになった。この生きたデータが、SKYACTIV-Xを進化させたのだ。
マツダに限らず、現在のクルマは純正カーナビに始まった通信技術を発展させて、ユーザーの走行データを取得できる環境を整えている。それでも、走行中のエンジン制御データまで吸い上げているとは、オーナーは夢にも思わなかっただろう。
実はこの手法は、テスラと実に良く似ている。テスラは自動運転ソフトをユーザーのクルマにインストールし、それを利用してもらうことで、膨大な自動運転の実験データを手に入れている。そうして集めたデータを元にソフトウェアを改善し、進化させているのだ。MAZDA3のSKYACTIV-X搭載車に関しては、エンジン回転4500rpmから上の加速性能を求めている傾向が見られたことから、このあたりを重点的に改善したそうだ。
しかも、これまでにSKYACTIV-X搭載車を購入したオーナーは悔しがる必要はまったくない。概報の通り、マツダは既納客については、無償でソフトウェアをアップデートしているからだ。
「今回のマイナーチェンジは、予定になかったものです。しかし20年11月の道路運送車両法の改訂で、特定改造許可申請によりソフトウェアのアップデートはユーザーのクルマに改造申請の必要がなく、書き換えることができることから、短期間でのマイナーチェンジが支障にならないという判断からです」(末岡氏)
既納客への感謝の意を込めたアップデートでもある、と末岡氏は語ったが、どうもこれは確信犯の疑いもある。というのも特定改造許可申請については19年にパブリックコメントを求めており、自動車メーカーは当然それより前に、こうした法整備の動きを知っていたハズだからだ。そうでなければSKYACTIV-Xは見切り発車での発売だった、ということになる。
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