日本にとって“渡りに船”だったのか? LINE騒動はゴタゴタ中世界を読み解くニュース・サロン(3/5 ページ)

» 2021年03月29日 16時15分 公開
[山田敏弘ITmedia]

LINE騒動は渡りに船

 ヤフー側は、21年1〜2月ごろに外部からの指摘でこの話を知り、調査を始めている。LINE社の関連会社で中国が拠点の「LINEデジタルテクノロジー」で日本人ユーザーのデータにアクセスしていることが判明し、ヤフー側の調査でも、この企業のみならず、韓国ネイバー社の中国法人でもアプリの管理などをするエンジニアやテスト要員を募集していたことも判明したという。こうした実態が見えてきて、最初にこの件を報じた朝日新聞の報道につながったのである。

 この報道を受け、LINE関連企業の幹部は、中国から日本人のデータにアクセスできるようになっているとは想像もつかなかったと、困惑を隠さなかった。ただヤフー側の関係者や、日本政府にとっては、今回の件は“渡りに船”だったと言えるかもしれない。

 なぜなら、LINEは韓国企業からの影響があるというイメージを払拭(ふっしょく)できていなかったからだ。情報を扱う関係者と話をすると、「データの安全性に懸念があるから」と言って、アプリを使っていない人は少なくなかった。LINE社もそう見られていることは認識していたはずで、だからこそLINEは日本で開発されて、日本でデータも管理され、すべて日本で完結していると見せてきた。先に紹介した自治体の関係者が怒っていたのもこの部分である。

 実は、3月に合併する前、ヤフー側もセキュリティにはかなり敏感になっていた。というのも、同社が提供してきたスマホ決算アプリ「PayPay」のシステムは中国やインドのものが使われていて危険だ、といったうわさが流れていたからだ。

 ヤフー関係者は以前、筆者に「PayPayにはいろいろとうわさがあるために、システムに怪しい部分がないか、穴がないか、徹底して調べ、安全性をしっかりと確認した」と強く主張していた。

 それだけではない。セキュリティの重要性を再認識しているヤフー側は、元インターポール(国際刑事警察機構=ICPO)の日本人サイバーセキュリティ専門家で元警察庁の中谷昇氏を迎えるなど、セキュリティに力を入れてきた。

 そんなヤフーがLINE社と合併して、22年には「PayPay」と「LINE Pay」が一緒になろうとしている。つまり、セキュリティに力を入れているヤフーにとって、LINE社のセキュリティ意識のズレは、両社がこれから一緒に提供していくサービスの足を引っ張りかねない。

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