日本にとって“渡りに船”だったのか? LINE騒動はゴタゴタ中世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)

» 2021年03月29日 16時15分 公開
[山田敏弘ITmedia]

ヤフーにとって悪い話ではない

 これは筆者の想像だが、LINE社が中国とつながっている事実がメディアで騒ぎになれば、関係者の間でセキュリティ意識が高くなる。このように考えると、今回の一連の騒動はヤフーにとっては悪いことではなかったのかもしれない。

 これからはヤフーや日本政府による、LINEアプリに対する管理体制が強まるのだろうと筆者は見ている。それは、この問題が発覚した後に、Zホールディングスグループが立ち上げた外部有識者による特別委員会のメンツからも感じ取れる。ヤフーに近い人たちや、日本の国家安全保障局(NSS)に20年4月に発足した経済・安全保障問題を担当する「経済班」に近い人物なども入っている。そういう意味からも、本当の意味でLINEアプリを国産アプリにしていくはずだ。

 ヤフー側の幹部に、筆者の印象をそう伝えると、こんな答えが返ってきた。

 「日本だけに閉じこもるということはなく、グローバルな企業になるべく、データのガバナンスを整備していくことになります。LINEは、日本の法律に従いながら、サービスを展開して、世界を目指すということです」

 LINEアプリは日本では圧倒的に人気だが、海外ではあまり知られていない。21年1月時点での人気メッセンジャーアプリをみると、トップはWhatsAppだ。Facebookが所有するアプリで、世界で20億人が利用している。2位は同じくFacebookが運営するFacebookメッセンジャーで、13億人が使っている。3位は中国のWeChatの12億人、4位も同じく中国のQQで6億人が使っている。次いで、強力なメッセージの暗号化を喧伝しているTelegramの5億人となっている。世界で1億6700万人のユーザがいるLINEの存在感は低い。

 さらにこの幹部は言う。「中国との関係を遮断するのは大前提です。韓国側の体制はこれから徐々に縮小していく。ただ、まだ韓国側が中国とどういう関係にもっていくのかは、非常に警戒しています。中国との関係を切れないのなら、日本側(ヤフー側)も考えないといけない」

 この問題は米中の関係にもつながっていく。米政府は、中国のハイテク企業などと「デカップリング」、つまり、分離していこうとしている。少し前から話題になっている中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)をめぐる問題もその例だし、半導体の分野でも中国企業への禁輸制裁措置をとっている。とにかく、中国のハイテク分野との関係に非常に神経質になっている。そんな流れの中で、同盟国である日本の国民の半数が使っている通信アプリのデータに中国側(そして韓国も然り)がアクセスしていたのはシャレにならない。

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