だらっと横にしてもいいのに、なぜコクヨはビジネスリュックを「立たせた」のか水曜インタビュー劇場(観察公演)(4/5 ページ)

» 2021年03月31日 08時05分 公開
[土肥義則ITmedia]

「容量」勝負はしない

土肥: スタンドバックパックは薄くて、13.3インチモデルの厚みは10センチ、15.6インチモデルは13センチ。社内から「もっと分厚いほうがいいのでは?」といった声はなかったですか?

伴:  なかったですね。ビジネスバッグを利用している人にアンケートを実施したところ「仕事用のカバンは、そこまで大きいモノはいらない」といった声が多かったんです。その理由として「たくさん荷物を詰め込むと、カバンの中がぐしゃぐしゃになる」「スマートに移動したいので、バッグは小さいほうがいい」「大きい荷物は手で持つので」といった意見がありました。

 机の引き出しのように使えるカバン――。こうしたコンセプトを掲げて設計していく中で、やはり大きなモノはいらないなあという結論になりました。ちょっと話は変わりますが、オフィスで使っている袖机の中はどうなっていますか?

開発当初のデザイン

土肥: たくさんの荷物が入っていますね。荷物が入りきらなくて、机の上に置いている人も。そこもあふれると、床に置いている人も。

伴:  ですよね。カバンも同じように大きければ大きいほど、その中にたくさんの荷物を詰め込んでしまう。「あれも入れて、これも入れて」といった感じで。不要なモノを持ち運ばないためにも、薄いほうがいいのではと考えました。

 また、大きいサイズのカバンって、たくさんあるんですよね。アウトドア系のカバンは容量を競い合っているところもありまして、当社はそこと勝負しているわけではありません。冒頭でも触れたように、ビジネスパーソンの働き方を改善するために、カバンを開発しました。こうした背景があるので、社内から「分厚いほうがいいのでは?」といった声はありませんでした。

土肥: なるほど。開発にあたって苦労はなかったでしょうか?

伴:  開発チームのメンバーに聞いたところ、全員が「これほど大きなサイズの縫製品をつくったことがない」とのこと。というわけで、どうやって進めればいいのかよく分からなかったんですよね。誰にどうやって頼めばいいのかさえも分からなかったのですが、とりあえずイメージ図をつくって、プロの方に見てもらいました。すると、「これはできないですよ」という返事。どういう意味なのか聞いてみると、縫製が必要なところにチャックをつけていたんですよね。ボクたちはド素人だったので、構造のイロハも分からずにデザインしていました。

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