ホテル激増の象徴として度々取り上げられる“京都”だが、観光都市にしてここでもビジネスホテルの増加は著しい。京都駅、特に八条口に面する通りを歩くと、駅に対面するかのようにずらっと10数軒並ぶ宿泊特化型ホテルの光景に驚く。インバウンド活況下から営業を続けるホテルもあるが、コロナ禍の中で新規開業するホテルもある。
通りに面したといえば、この辺りで名高いシティホテル「都ホテル 京都八条」については、近鉄グループホールディングスが投資ファンドに売却するというニュースが先日話題になった(運営は続行)。宿泊機能以外にも多彩な料飲施設、バンケットやウエディングなども手がけるシティホテルに対して、効率的な運営が尊ばれる宿泊特化ホテルが林立する光景を照らし合わせつつ、筆者の目にはコロナ禍のホテル業界を象徴するかのような光景にも映った。
ここで実際にコロナ禍で開業したビジネスホテルのケースを見てみたい。京都駅八条口に21年3月1日に開業した「レフ京都八条口byベッセルホテルズ」へ取材に出向いたのは、緊急事態宣言も明けた4月に入ってから。駅に面する大通り沿いではなく、1本裏道に入った立地で、目立たない分大通り沿いの喧噪はない。コロナ禍前からのプロジェクトが実現したわけであるが、困難な船出であったことは想像に難くない。
ベッセルホテルズは、ベッセルホテル開発(広島県福山市)が運営するホテルチェーン。大規模チェーンが席巻する業界にあって近年は出店スピードを加速。沖縄でリゾートホテルも手がけている。今後も大阪・なんば、愛媛・松山、関西空港(泉佐野)と宿泊特化型の開業が続く。こうした出店の動きについて同社代表取締役の瀬尾吉郎氏は「従来から明確にターゲットを絞っており今後も同様」といい、近年のインバウンド大活況下にあって「特に日本人旅行者にフィーチャーしインバウンドもできる限りコントロールしてきた」と語る。
ベッセルホテルのビジョンに“あなたと家族と街を愛する”というものがあり、18歳以下の子どもは添い寝無料というサービスも提供している。こうしたイメージとインバウンドはやはり結びつかない。
ビジネスホテルが激増してきたことを指摘したが、そもそもインバウンド活況の有無にかかわらず、従前からビジネスホテルへの旅行者の支持は厚かった。観光庁が発表した2016年度の宿泊旅行統計調査によると、タイプ別の宿泊者数の割合は、旅館20.9%、シティホテル15.7%、リゾートホテル14.9%に対して、ビジネスホテルは41.9%と突出していた。旅行者の多くが宿泊先としてビジネスホテルを選択していることがわかる。この割合はここ数年も大きな変化はなくビジネスホテルの高い需要が続いてきた。
ビジネスホテルを出張など、ビジネスで利用する人は全体の3割程度で、プライベート利用が大きな割合を占めるというデータもあり、観光旅行でのビジネスホテル利用が定番となっていることを実感する旅行者も多いだろう。そうした点でも家族とホテル、そして街にフィーチャーしてきたベッセルホテルズは先見性という点でも際立つ。
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