——ビットコイン以外にも多様な仮想通貨が登場し、プログラミングできたり、IoTデバイス間の決済に特化した機能を持ったりと多様な特徴を持っています。仮想通貨がインターネットのようなプラットフォームとなるとき、どんな仕組みになるのでしょうか。
廣末氏 ビットコインのセキュリティレベル、時価総額をうまく使うべきだと思う。最初の国家が発行した通貨はペーパーなので、金を裏付けにしていた。金本位制だ。いつでも兌換(だかん)できるから単なるペーパーではないというところからスタートして、十分普及してから兌換を停止して本当のペーパーマネーになっていった。
IoT向けの暗号資産も、ビットコインで裏付けされた「ビットコイン本位制」というものになるだろう。いつでもそのデータをビットコインに替えることができるということになれば、価値が保証される。ビットコインで信用に足る器ができたということだ。
——ビットコインは送金のための仕組みではなく、金のように価値の保存のための存在になるのでしょうか。
廣末氏 もともとビットコインは価値交換としての送金のためのものとして見られていた。お金がお金として機能するには要件があって、インフレしていかないといけない。今100円のものが90円になってしまうから、「早く使ってしまえ」とならないと流通しない。ところがビットコインはデフレの構造だ。そうすると逆のことが起きて貯めるという方向になってしまっている。
これは最初から分かっていた話だ。だからレイヤーを分けることで、送金としてのレイヤーを作っていけばいい。インターネットでいうとTCP/IPがベースにあって、その上にHTMLなどのプロトコルがレイヤー化されている。ビットコインでも、マイクロペイメントなど、送金レイヤーを新たに定義して送金はそこでやればいい。
ビットコインに送金用のレイヤーを重ねて、高速、低コストで送金を行うための技術は早くから開発が進んでいる。図は16年にドラフトの論文が発表された「ライトニング・ネットワーク」。ビットコインのブロックチェーンに送金トランザクションを記録せず、ブロックチェーン外(オフチェーン)で送金を処理する。ビットコインの上に乗せられた送金レイヤーなので、レイヤー2技術などともいわれる——第2位の時価総額を持つ仮想通貨である、イーサリアムはどうでしょうか。
廣末氏 イーサリアムは着実に進展をしているが、非常に複雑になっている。個人的には、シンプルな構造の中に、レイヤーを分けて複数の用途を用意するほうがいいと思っている。イーサリアムは、面白いが美しくはない。
——仮想通貨取引所は、インターネットでいうISPに当たるというお話でした。仮想通貨の世界に入っていくためのゲートウェイだという位置づけです。取引所であるビットバンクは、現物の取引では大きなシェアを持っていますが、FXのような差金決済サービスは提供していません。
廣末氏 将来のことを見据えた場合、仮想通貨取引所に求められるのは現物の流動性だと思う。デリバティブだけ提供するのはバクチといわれてもしかたない。商売するならFXでもいいのだが、まずは現物の流動性を提供することにこだわりたい。
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