ショーケースがリモートワークを推奨し始めたのは、20年2月。当時はまだダイヤモンド・プリンセス号における新型コロナウイルスの感染がテレビで報道され始めたばかりで、コロナが一体どういう存在なのか、世間も実態をつかみかねていた時期だった。手探りで“できる部門からなるべく”というニュアンスのもと実施したリモートワーク、在宅勤務を選んだ社員は30%だった。
「『そこまでやらないといけない事態なのか?』と懐疑的な考え方があったことも事実です。しかし、100人に満たない社内で一人でも感染したとき、そのダメージが大きいことは容易に想像できました。勤務体制の原則から変えようと、経営陣が積極的にリモートワークへコミットすることで、会社全体の空気を変えられたことは大きいですね」(山田氏)。できるかどうか、ではなく“どうやるか”。今回の件に限らず、仕事を進める上でトップが常に重視していたという考え方が功を奏し、早くも4月21日時点でリモートワーク率は95%にまで拡大したという。
ここまで聞くと、ただトップダウンで降りてきた命令に社員が従っただけのように感じるかもしれない。しかし、アデコグループジャパン(東京都千代田区)が21年4月28日に公開した調査結果によると、緊急事態宣言中のリモート実施率は、従業員1000人未満の企業規模別で28.9%にとどまっている。一方ショーケースは、緊急事態宣言の有無に関係なく、現在に至るまで実施率は95%。「経営陣が命令を下したから」という理由だけでは維持できない数字に思える。どのような施策をもって、高い実施率を保っているのだろうか?
ショーケースでは、リモートワークの実施をフェーズ1〜3に分け社内で分析。社員アンケートなどを参考にして、少しずつ改良を重ねてきた。
フェーズ1は、20年2月から手探りで始めつつ、リモートワーク率95%を達成した「リモートワーク・フルフレックス勤務体制」だ。約3カ月にわたって継続した結果、在宅でも業務遂行は可能であると判断したものの、コミュニケーション不足が課題になった。
そこで7月以降はフェーズ2として、週1日+αのオフィスワークを組み合わせた「ウィズ/アフターコロナの新しい働き方」をスタート。リモートとオフィスワークの良いとこ取りを目指したが、今度は事業部や部門によってパフォーマンスにバラつきが出ることに。
20年9月から現在にかけてのフェーズ3では、画一的な推進ではなく、柔軟な働き方が生産性を上げるという判断のもと、事業部や部門ごとにリモートとオフィスワークの比重を定めた。その結果、多様な働き方が見られるようになったという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング