なぜ? トラブル続出のみずほ 「ワンみずほ」どころじゃない三竦みの権力構造このままでは「落ちこぼれメガバンク」に?(3/4 ページ)

» 2021年05月11日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]

 そんな状況下での苦肉の策が、旧興銀を実質的にみずほコーポレート銀行としてみずほ銀行と分離させた統治であり、「持ち株会社と傘下2行」のトップポスト3つを3行で分け合うたすき掛け人事でした。

 ただ、興銀はそのプライドの高さから実権を握りたいものの、リテールに明るくないという弱点ゆえに主導権を握れず。そしてDKB、富士はリテール分野での覇権争いで互いをけん制しあいながらも、一方では興銀に主導権を渡してなるかと目配せする――という三竦みの構図がこのときにでき上がってしまったのです。三竦みとは、3つのものが互いに得意と苦手を持ち合わせ、けん制しあうことで3者とも身動きが取れなくなるような状態のことをいいます。そして三竦み最大の問題点は、強固なリーダーシップは抑制されてしまうということにあるのです。

画像はイメージ

 ちなみに三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)は、統合時に東京三菱銀行によるUFJ銀行救済の色合いが濃く、基本三菱主導での揺るがぬ企業統治が行われ、東京三菱出身者以外はトップに立てないという組織を貫く強固なリーダーシップが存在しています。

 三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)は、合併当初こそ持ち株会社と銀行の主要ポストを2行のたすき掛けで分け合うような統治があったものの、子会社の統合などを住友主導で進め、次第に住友支配が強くなります。結果、持ち株会社取締役の大半を住友出身者で占めるようになり、16年にSMFG、SMBC双方のトップに住友出身者が座ることで住友主導が決定的となって、住友による強固なリーダーシップの下で組織は統治されています。

 そんな2行を尻目に三竦み構造が続くみずほは、組織統治におけるリーダーシップの圧倒的な弱さから、さまざまな弊害を生んでしまうことになるのです。

 その代表ともいえる不祥事が、みずほのイメージを著しく傷つけてきた度重なるシステム障害です。3行統合当時、三竦み状態での主導権不在ゆえ、それぞれ異なるベンダーが構築したシステムを生かすという無謀な3システムの接続を行いました。結果、それが原因で二度の大きなシステム障害を引き起こし、監督官庁からその都度業務改善命令を受けてきたのです。

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