なぜ? トラブル続出のみずほ 「ワンみずほ」どころじゃない三竦みの権力構造このままでは「落ちこぼれメガバンク」に?(4/4 ページ)

» 2021年05月11日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]
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 そして今年2月、またもや世間を騒がせた通算三度目のシステム大障害が発生。数年の歳月と4500億円を投じて一から構築し直した新システムを稼働させた後にもかかわらず、わずか2週間の間で4回も問題が連続発生した一大不祥事でした。新システム稼働後なのになぜ、と思われるところですが、組織風土のなせる業としかいいようがないと筆者は思います。つまり、システム障害は氷山の一角。強固なリーダーシップが存在しない組織は、組織の日陰部分にさまざまなひずみや緩みが生じやすいのです。

 ユニゾの問題も全く同じ理由でしょう。先にも述べたように、組織統治において強固なリーダーシップが存在するなら3行の関連会社は2大メガバンクと同じくとっくに業種別で統合され、関連会社の経営ベクトルはグループの収益増強という方向で統一されるはずです。ところが、みずほにおいては強固な経営リーダーシップ成立に至らぬために、いまだ各関連会社が旧3行の植民地的に存在し、それぞれを旧行のOBが牛耳るような状態にあるのです。銀行OBである関連会社トップが親会社のリーダーシップが及ばぬ日陰の環境下では、グループの収益増強というベクトルに反するような身勝手な経営すらも許されてしまう状況に陥るわけです。

 これが原因となり、今回のように“親”に反旗を翻してグループとの縁を断ち切るというあまりに勝手な行動を許し、“親”が紹介した他の銀行にも迷惑を掛けてしまっているわけです。ユニゾの1件には興銀出身というプライドも関わっているようにも思え、三竦み文化の複雑さ根深さを改めて思い知らさられるところです。

このままでは「落ちこぼれメガバンク」に

 13年にみずほコーポレート銀行をみずほ銀行に合体させ「ONEみずほ」を宣言したみずほグループですが、その効果はいかほどであったのか、以上のような現状からはいささか疑問に思えます。3行合併から20年。トップはことあるごとに、「合併後入行の社員が全体の7割に達し旧行派閥問題は解消済み」とアピールしていますが、現役幹部行員は「旧行意識を持った3割の行員が組織運営を担う経営層、指導者層を固めており、問題はいまだ深刻」と表情を曇らせます。現在、みずほFGのトップ、坂井辰史社長は旧興銀出身。みずほ銀行の藤原弘治頭取は旧DKB出身、次期頭取に指名されていた加藤勝彦常務は旧富士銀出身。実質的な三竦み状態が依然として続いているのは、いわずもがなの状況なのです。

 上位2メガバンクからの劣後を一層加速させる旧行三竦み問題が本当に解決するのは、みずほ入行組が経営トップになるであろう5〜10年後でしょうか。しかし、今銀行界が対峙している激変の荒波は、それを待ってくれるのでしょうか。今回システム障害問題で立ち上げられた第三者委員会は、システム問題にとどまらない企業統治にまで踏み込んだ原因調査を宣言しています。その調査結果が、どこまで強固なリーダーシップ不在と旧行三竦みという特異な組織風土問題に踏み込めるのか。みずほがこのまま「落ちこぼれメガバンク」に成り下がってしまうか否かは、そこにかかっているかもしれません。

著者プロフィール・大関暁夫(おおぜきあけお)

株式会社スタジオ02 代表取締役

横浜銀行に入り現場および現場指導の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。

全銀協出向時はいわゆるMOF担として、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。

銀行では企画、営業企画部門を歴任し、06年支店長職をひと区切りとして円満退社した。

その後は上場ベンチャー企業役員などとして活躍。

現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業のアドバイザリーをする傍ら、出身の有名超進学校人脈や銀行時代の官民有力人脈を駆使した情報通企業アナリストとして、メディア執筆者やコメンテーターを務めている。


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