本記事は『人事実務』(2021年4月号)特集「学び直しとリスキリング」から「事例2 パーソルキャリア」を一部抜粋、要約して掲載したものです。当該号の詳細はこちらからご覧いただけます。
人材紹介や転職・就職支援サービスをはじめとする人材サービスを提供する企業グループとして知られるパーソルキャリア。現在は、「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに標榜(ひょうぼう)し、多様な事業を展開している。さらにミッションとして「人々に『はたらく』を自分のものにする力を」を掲げ、これを推進していくために、自社内の制度等についても変革を進めているところである。
同社における自発的な学びを支える制度や取り組みについて、人事本部組織・人材開発部の小松由氏、人事本部人事企画課の柴口幸子氏、人事企画部の中曽根利江子氏に伺った。
●社名:パーソルキャリア株式会社
●創立:1989年6月
●資本金:11億2700万円
●従業員数(単体):4540人(有期社員含む/グループ会社出向中の者は除く/2021年1月末時点)
●事業内容:人材紹介サービス、求人メディアの運営、転職・就職支援、採用・経
営支援サービスの提供
●従業員数:グループ5364人、本社1525人
●本社:東京都千代田区丸の内2−4−1丸の内ビルディング27F
学び直しやリスキリングにつながる同社の施策について紹介していこう。
まず、2016年より、社員が働く日数・時間・場所・休業/休職を選択できる制度「FLASH」を導入している。人事企画部の中曽根利江子氏は、こう語る。
「当社では2016年に人事制度の改定をしましたが、制度施行後に社員の長期的な就業や持続的な成長を支援していこうといった思想の下に導入したのがこの制度です。基本的に、社員に対して『時間』というベネフィットを提供していくという中身になっています」
FLASH導入の背景としては、社員の平均年齢が若く(制度導入当時33.1歳)、将来的に育児や介護などを経験する社員が増加すると想定され、社員のライフステージの変化に応じた働き方の多様性が必要となることがあった。社員がそうしたライフステージの変化を迎えても、この制度を利用することで長期就業や持続的成長が実現できるようにしようというわけである。
また、育児・介護などのライフイベントにとどまらず、学習やスキルアップ、地域活動や社会活動にも利用できるようになっている点も大きな特徴だ。
FLASHの具体的な制度の概要を紹介すると、まず勤続年数など一定の要件を満たせば利用可能。社員が働き方を選択するシチュエーションを5つのカテゴリーに分類しており、「長期就業するなかで、一瞬(FLASH)は働き方を柔軟に選択できる時間も必要」という意味を込めて「FLASH」と名付けた。このF・L・A・S・Hは、下記の5つの各カテゴリーの頭文字にもなっている。
育児や家族の介護が必要な社員が利用できる時短・休業/休職の制度。以前からあった制度の利用可能期間を以下のように拡大した。
最近では、不妊治療でもこの制度を利用できるようになっている。不妊治療の場合、対象者要件を満たせば最長1年の時短勤務(1年ごとの見直し・更新が可能)あるいは最長1年間の休職が可能。不妊治療のための通院として活用できる。
仕事の成果につながる勉強やインプットをしたいと考えている社員のための時短・休職制度。対象者要件を満たせば最長1年間の時短勤務あるいは最長2年間の休職が可能。また、時短勤務は1年ごとの見直し・更新が可能だ。留学・通学などのスキルアップ期間として活用できる。
勤続年数の長い社員のうち、趣味や余暇活動に時間を割きたい社員や、リフレッシュしたい社員向けの時短・休職制度。対象者要件を満たせば、理由は問わず最長1年間の時短勤務あるいは最長1年間の休職が可能。こちらも時短勤務は1年ごとの見直し・更新をすることができる。
ボランティアや地域の活動などに参加したい社員向けの時短・休休業/休職制度。現在では複業もここで認めており、対象者要件を満たせば、最長1年間の時短勤務(1年ごとの見直し・更新が可能)あるいは最長1年間の休業が可能。
ケガや病気などによりやむを得ず休職や就業制限が必要になるケースに適用。
その他、在宅勤務の導入により生産性効用が見込める場合は、最長1年間の在宅勤務を認める(1年ごとに見直し・更新)。
Learning/Avocation/Socialを利用する際には3カ月前に本人が申請する。要件を満たしていれば基本的にそのまま休職ないし時短勤務を認めているので、それに伴う業務や人員の調整は各部署で行っている。また、この制度で休職した社員は、例えば他のカテゴリーで再度休職を取りたいという場合に、連続での休職は不可で、一定期間は業務に戻る必要がある。
制度全般での実際の利用のされ方として、最近増えてきているのが、Social のカテゴリーだ。例えば地域活性化事業に携わっている人や、複業のために時短勤務を選んでいる人などがいる。
特にLearningのカテゴリーの利用状況は、コロナ禍の前と比べると、オンラインでの学習がしやすくなったことで、若干増えている傾向がみられる。例えば仕事が終わった後に講座を受けたいので、勤務時間を少し短くしている人もいる。なかにはもともと海外留学を予定していて、いったんコロナ禍でやむなく取りやめる方向でいた人が、オンラインでの留学が可能となり、この制度を使って休職しているケースもあるそうだ。
オンライン以外でも、大学院の卒論の時期の3〜4カ月程度だけ集中して勉強したいので、休職をしている人もいるという。
「制度全体でみれば、利用者が圧倒的に多いのはFamilyとSocialで、Learningはそれほどではありませんが、これはおそらく当社の社員の年齢構成が影響していると思われます。学び直しというよりも、現時点では仕事を通じて自己成長するというフェーズにいる社員のほうが多いからです。ただ社会活動や地域活動は複業的なものも含めて若い人もかなり参加しており、それがSocialの利用の多さに反映されているようです」(柴口氏)
一方、会社としての制度や施策以外に、社員の自主的な学び直しなどの活動も、非常に盛んになっている。
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