「レジ袋有料化」は“天下の悪法”か 次は「プラ製スプーン有料化」で、経済に大打撃長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/6 ページ)

» 2021年05月18日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

エコバッグを使った万引きが増えた

 繰り返すが、レジ袋は日本では廃プラスチックの2%にすぎず、環境省が問題視する海洋汚染解決の本丸ではない。有料化は環境への意識を高めてもらうきっかけづくりだと、環境省自らが認めている。

 各家庭においてレジ袋には、ごみ箱の内袋、ごみ箱の代用、ごみ収集袋といった役割がある。それ以外には、冷蔵庫の中の食料保管、洗濯物の保管、犬の糞回収などとして95%以上が再利用され、リユース率が非常に高かった。実態としてワンウェイ、使い捨ての無駄な無料配布物ではなかったのだ。

昨年7月からレジ袋が有料化された(出所:アスマーク リリース)

 政府は国民のレジ袋活用の実態を見ようとせず、ワンウェイと決めつけて規制をした。

 その結果、レジ袋有料化によって、スーパーなどで取っ手付きのポリ袋の販売が伸びている。レジ袋の代わりに使うためで、余計な家計負担となっている。

 2月22日に放映された日本テレビ系の報道番組には、ポリ袋メーカー「日本サニパック」(東京都渋谷区)の井上充治社長が出演。同番組で「前年比で2〜3倍と売り上げが伸びている」と語った。しかし、同社に問い合わせると「市販のポリ袋は売れていても、レジ袋の売り上げは減っていて、相殺されている」という。会社として好調に推移して喜んでいるわけではない。

レジ袋・ポリ袋のメーカー、日本サニパックの工場風景(出所:日本サニパック公式Webサイト)

 一方、小売り側にしてみれば、レジ袋を提供していた分だけ経費削減になるので、喜んでいるのかと思ったら、必ずしもそうとも言えない。エコバッグを使った万引きが増えたからだ。

 東京・多摩地区を基盤とするスーパー「いなげや」では、「1階に集中レジを設置していると、2階の様子が見えにくくなる。そこで、2階の棚を低くする万引き防止対策を行った」という。見渡しを良くするため、商品の陳列数を犠牲にしてでも、棚を低くする施策に踏み切った。

スーパー越前屋では、エコバッグを畳んで入店するように呼びかけて万引きを防いでいる(出所:越前屋公式ホームページ)

 また、大阪・西成区のスーパー「越前屋」では「エコバッグを折りたたんで入店していただくルールを徹底するため、お店で呼びかけを続けたので、エコバッグによる万引きはなくなった」と、難題を克服した。しかし、コロナ禍で貧困に陥る人が増えたので、従来型のポケットに入れる万引きが増えた。まさに、一難去ってまた一難の様相だ。

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