「レジ袋有料化」は“天下の悪法”か 次は「プラ製スプーン有料化」で、経済に大打撃長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/6 ページ)

» 2021年05月18日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

エコバッグからレジ袋に戻す動きも

 エコバッグはそもそもエコなのかという論議もある。日本LCA学会は09年3月、マイバッグ(エコバッグ)とレジ袋の原料、製造、輸送、処分を合計した二酸化炭素排出量を算出した。マイバッグを50回以上使用しなければ、レジ袋より二酸化炭素の負荷が高く、環境に優しくないと結論付けている。

 新型コロナの感染拡大を受けて、米国ではエコバッグを禁止して、レジ袋に戻す動きもある。

米国のスーパー、ハイヴィでは新型コロナの感染拡大を受けて、昨年3月エコバッグの持ち込みを禁止した(出所:ハイヴィ公式Webサイト)

 カリフォルニア州では16年に禁止したレジ袋が20年4月に復活。オレゴン、マサチューセッツなどでも同様の動きがある。スーパーでも、独自にエコバッグの自粛を求めるチェーンもある。家庭から持ち込むエコバッグに接触すると、付着したウイルスから店内で感染するリスクがあり、お店で配布するレジ袋のほうが安全・安心だからだ。

 こうして見ると、レジ袋有料化は拙速で、立ち止まって考えたほうが良かったのではないか。

レジ袋は海を汚染しているのか

 実際にレジ袋はどれほど海洋を汚染しているのだろうか。

 2010年の推計とやや古いが、18年7月に環境省がまとめた「海洋プラスチック問題について」によれば、陸上から海洋に流出したプラごみ発生量の最大値を国別で見ると、1位は中国の353万t/年、2位はインドネシアの129万t/年、3位はフィリピンの75万t/年、4位はベトナムの73万t/年、5位はスリランカの64万t/年の順であった。米国は20位で11万t/年、日本は30位で6万t/年であった。

海洋に漂うプラスチックごみ(出所:ソーウインド ジャパン、リリース)

 日本の6万t/年が無視できる範囲だとは言えないが、ダントツの1位である中国の60分の1だ。懸命にエコ運動をやっている欧米諸国の発生量もそれほど高くなく、中国をはじめとするアジア諸国に、環境意識を高めてもらわなければ、海洋汚染は解決しないのである。

 環境省が16年度に全国10地点(稚内、根室、函館、遊佐、串本、国東、対馬、五島、種子島、奄美)で海洋の漂着ごみのモニタリング調査を実施したところ、容積1位は「プラスチック」(48.4%)、2位は「自然物」(41.3%)、3位は「木材」(7.0%)の順だった。環境保護のために、量が断然多く分解されにくいプラスチックを規制する法律を施行するのは、理にかなっている。

海洋ごみの実態。ポリ袋やカトラリーの割合はごく僅か(出典:環境省公式Webサイト)

 プラスチックの内訳はどうなっているのか。容積1位は「漁網、ロープ」(26.2%)、2位は「発泡スチロールブイ」(14.9%)、3位は「飲料用ボトル」(12.7%)となっていた。ポリ袋は0.3%にすぎなかった。

 また、大きなサイズで製造されたプラスチックが自然環境中で破砕・細分化されたマイクロプラスチックの主因がレジ袋だというエビデンスもなく、法規制するに当たって、レジ袋がスケープゴートにされた感が強い。

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