HISのオンラインツアーが始まったのは、2020年4月のこと。新型コロナの感染が広がって、ビジネスの世界でも「Zoom」を使う人が増え始めたころに、どうやってこのサービスをスタートしたのだろうか。
同サービスを発案したオンラインエクスペリエンス本部の八幡正昭さんに聞いたところ「新型コロナの感染が広がって、海外へ行けない状況になりました。なんとかしなければいけないということで、『とりあえずオンラインツアーをやってみよう!』といった話になりまして。まずは、レクチャー形式のツアーを無料で始めました」とのこと。
録画済みの映像や写真などをバーチャル背景に入れ込み、参加者に見せながら説明する。現地に足を運べない状況だったので、レクチャー形式を選択したわけだが、4〜5月の間に約6000人が参加。準備期間が短く、試験的に始めたこともあって「数百人が参加すればいいかな」(八幡さん)と思っていたそうだが、想定以上の結果に。
「前例はないけれど、ビジネスとしてやっていけるのではないか」と考え、20年6月以降は有料化に踏み切る。しかし、である。未知の世界でもあるので、お客がどんなコンテンツを好むのかよく分からなかったのだ。そこで、プロジェクトチームはどんな手を打ったのか。とにかく、どんどんやってみる。そして、お客の反応を見る作戦に出たのだ。
ツアーは基本、2人で行う。ガイド1人、MC1人である。スタート時は慣れないこともあって、うまくいかないことも。しかし、「この光景に対して、カメラはこのアングルで」「ガイドだけがしゃべるのではなく、MCと掛け合いで」「飽きさせないためにクイズ形式を導入しよう」といった具合に、参加者が楽しめるような工夫を少しずつ増やしていく。
どんどんやってみて、見直すべきところは改善する。PDCAを回すことで、クオリティーをアップさせていったわけだが、ガイドとMCの姿を見ていると、まるでユーチューバーのように見えてくるし、テレビ番組のようにも見えてくる。考えてみると、現地スタッフはテレビ番組でいうところの“中継”を行っていて、ひょっとしたら、そっち方面でも活躍できるのでは? と感じるほど、時間内にうまくまとめるのだ。事実、参加者のコメント欄を見ると、多くのツアーで「五つ星」(満足度が非常に高い)がキラーンと輝いている。
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