もう一つ組織を強化していく上で重要な点がある。それは必ず「今のボトルネックを特定して動く」ということだ。
よくあるのが、組織ごとの課題を挙げそれをそれぞれの組織内の努力で改善して成果を上げようとするやり方、いわゆる個別撃破戦法だ。THE MODEL型では組織が複数に分かれているので、こういう手法に走りがちだがこのやり方はうまくいかないことが多い。
なぜなら、まず成果を上げるためのポイントはマーケ→セールス→カスタマーサクセスまでのフローの全体に散らばっているわけではなく、どこか1つに集約されていることがほとんどだから。そしてもう1つの大きな理由は、その課題は該当する1つの組織だけが頑張れば解消されるわけではなく、全組織が協力し合わないと解決することができないからだ。
例えば、カスタマーサクセスにおいて顧客の解約率が高い、という課題があったとして、それをカスタマーサクセスだけで解けるだろうか?
答えはNOだ。カスタマーサクセス内の改善は当然必要だが、それだけでなく、そもそも「どんな顧客に売れば継続しやすいのか」という観点をマーケやセールスとシェアし、協力してもらうことが必須だ。
このように、全フェーズの中でボトルネックがどこかを常に考え続け、そしてそれを全組織を上げて解決する、という営みを繰り返していくのが事業成長のポイントになる。
最後にオペレーションの観点だ。リーダーの仕事はメンバーの業務を組織の成果に転換することに尽きる。そのためにはメンバーが何を目指すべきかという目標、つまり業務のKPIをどのように置いてマネジメントするかという観点が重要になる。
過去の記事でも触れたが、事業の目標として財務的な経営KPIがありリーダーはこれらの数値に責任を持っている。しかしそれをそのままメンバーの業務のKPIとしても振り返りのタイムスパンと一致せずにワークしないことが多い。
カスタマーサクセスではチャーンレートなどが財務指標になるが、契約期間単位でしかPDCAが回らないため、チャーンに向けた中間KPIとしてヘルススコアを活用する場合がある。インサイドセールスでも商談からの受注金額が財務KPIとしてありつつ、そこに向けた指標として商談数や商談を作るためのアクション数をKPIとして置く。
このように、経営KPIとは別に業務の目指す方向を決める行動KPIを設定することで、目先の業務と財務KPIの連動性を持たせつつ、足元の活動をドライブさせることがTHE MODEL型の組織を運営する上でのポイントになる。
KPIを設定する際は2つの視点のバランスを大切にすると良い。一つはシンプルさだ。あまりに複雑な目標設定をすると自分が何を目指していいかが分かりづらくなり、力を発揮しにくくなる。短期かつ単一の目標を設定したときの組織のパワーは限りなく大きくなる。
もう一つの視点は後工程への意識だ。実はこれはシンプルさとは相反する概念なので、バランスが重要になる。THE MODEL型の組織は4つの組織が同じ方向を向いて連動することが重要なので、自組織が目指すことで他組織との相反が大きくなりすぎるようなKPI設計をしてしまうと組織同士のサイロ化につながってしまう。
後工程を意識したKPIの例としては、営業が受注額をメインのKPIとしつつ初回更新率をサブのKPIとして持つ、あるいはインサイドセールスが商談創出数をメインのKPIとしつつ受注率もサブのKPIとして追うなどだ。
カスタマーサクセスの場合でも、顧客の成功事例が一周してマーケティングに寄与するため、成功事例の数をKPIに置くといった工夫も可能だ。
以上のように、THE MODEL型組織の運営では多岐にわたる要素が事業成果に関わってくる。集中してリソースを投下する部分を選定しながらも、常に広い視野で現状課題を把握し続ける意識を持って臨んでいただければ幸いである。
株式会社ビービット カスタマーサクセス
京都大学経済学部を卒業後、ビービット入社。コンサルタントとして教育・メディア・金融など50以上の企業でUX改善・成果向上に従事。その後、UXコンサルティングプロジェクト責任者を経て2018年よりUXチームクラウド『USERGRAM』のカスタマーサクセス立ち上げ・運営に携わる。累計300社以上のUX企画推進・人材育成を支援し、2021年よりインサイドセールス責任者。
株式会社ビービット:https://www.bebit.co.jp/
Twitter:@wataridori89102
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