ただし民間の金融機関においては、実際の対応のきっかけは、日本でお馴染みの外圧によるものになるのかもしれない。
マネーフォワードの瀧氏は、環境対応に対して「米国と欧州で思想基盤が違う」と話す。早くから環境対応に取り組み、ESG投資でも先行していた欧州は理想主義的だ。「こういう社会にしなくてはいけないんだ、というところからバックキャストで考えている。コストベネフィット分析ではなく、最後は頑固さが感じられる」(瀧氏)
一方で、トランプ政権でパリ協定から離脱した米国は、バイデン政権になって環境政策を一転。パリ協定復帰とともに、政策の中心に環境を置いた。ただし、米国企業の取り組み方は「炭素税を課されるようになるとか、サービスや製品が使われなくなるとか、(石油資源をむやみに使う)ブラウンエコノミーの担い手は投資する価値が低いんだという観点で、グリーン化に向けた投資を促している」(瀧氏)。いわば、このまま進むと企業が大きなダメージを受けるので、環境対策を進めなくてはという発想だ。
翻って日本はどうか。国内大手金融機関などのヒアリングから、瀧氏はこう話す。
「米国は受託者責任の延長で、欧州は公益から逆算している。日本は『海外での趨勢が出てきているから、日本も対応しないといけない』。オーガニックにどっちに行きたいというものがない感じだ」
金融機関自身がどうしたいか、どうすべきかではなく、外部からの働きかけで変わるのは日本企業らしいのかもしれない。金融庁の池田氏は、銀行のサステナブルファイナンスへの温度感についてこう話した。
「(パリ協定の目標に沿った投資を行うための経営戦略の計画開示を求める)株主提案がメガバンクには出されていて、みずほHDでも3割を超える支持を集めた。投資家サイドからのプレッシャーをメガバンクも感じ始めている。温度感は急速に高まっている」
理想主義的でもなく、損得を見据えて早急に動くわけでもないが、“空気”ができたら一丸となって進むのが日本的といえば日本的。銀行も機関投資家も、金融庁の指導のもとでサステナブルファイナンスにかじを切り始めている。
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