2人に1人は不眠症? 「世界一眠れない日本のビジネスパーソン」がつくられていく構造的な理由スピン経済の歩き方(5/5 ページ)

» 2021年06月01日 08時58分 公開
[窪田順生ITmedia]
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ブラックな労働環境

 ビジネスという戦い・競争の場では、どうしても人は「強さ」をアピールしがちだ。「弱さ」を見せてしまうと、取引先から大きな仕事を任せられないし、上司や同僚からも信頼されない。だから、眠れないなどの「弱さ」を酒をあおって誤魔化す。

 戦前に大ヒットした歌謡曲「酒は涙か溜息か」を筆頭に、日本の演歌で「悲しい酒」の歌がやたらと多いのは、日本のビジネスパーソンにとって飲酒とは、不安や恐怖をまぎらせて眠りにつかせる睡眠剤であり、理不尽や悔しさをぐっと飲み込んで耐える鎮痛剤でもあったことの証なのだ。

ストレスフルな労働環境だと……(画像はイメージ)

 とはいえ、このような酒の飲み方が健全であるはずがない。厚生労働省によれば、生活習慣病のリスクを高めるような飲酒をしている者の割合を減少するように取り組んでいるが、一向に減少しておらず、「女性は有意に増加している」(全国健康関係主管課長会議資料 3月2日公表)という。

 「不眠症大国」というシビアな状況にある現実も真摯(しんし)に受け止め、日本のビジネスパーソンの多くが、「酒でも飲まないとやってらんねーよ」と愚痴るブラックな労働環境を、そろそろ本気で改善すべきときがきているのではないか。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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