“日本一の朝食”を出す函館のホテル 宿泊客数を抑えてまで守ったモノとは?連載・瀧澤信秋「ホテルの深層」(2/4 ページ)

» 2021年06月14日 06時00分 公開
[瀧澤信秋ITmedia]

”日本一の朝食”と名高い函館のホテルとその秘密

 北海道はエリア全体がホテル朝食激戦区であることを前述したが、“日本一”と評価の高い朝食を提供するのが「センチュリーマリーナ函館」(函館市)だ。

 函館駅や函館朝市、金森赤レンガ倉庫といった函館の観光名所にほど近い場所へ19年春にオープンした。同所は“函館ベイエリア”といわれ、すでに朝食において全国区の人気を誇る施設が集中していた。

函館ベイエリアと函館山を望む客室(筆者撮影)

 一方でセンチュリーマリーナ函館は、開業後ほどなくして旅行サイトの朝食ランキングで全国1位となりその名を全国に轟かせた(旅行サイト「リラックス」朝食満足度全国1位)。既存の周辺ホテルについて研究できる立場ということもあったのだろうが、センチュリーマリーナ函館の朝食には、それだけにとどまらない数多くの秘密が隠されていた。

 同ホテルの朝食をプロデュースしたのが、ホテルを運営する札幌国際観光相談役の中野元氏。中野氏は長年、食品製造業界に身を置き、飲食業に関与はしていたものの、ホテル業界での経験はなかった。

インタビューに答える中野 元氏(筆者撮影)

 そのような中野氏であったが、グループホテルの「センチュリーロイヤルホテル」(札幌市)、「釧路センチュリーキャッスルホテル」(釧路市)の朝食改善でホテル再建の手腕を発揮。釧路では宿泊売り上げが再建前の約3倍となった。

 そうした経験が、センチュリーマリーナ函館の朝食誕生に大いなる影響を与えている。ある種、ホテルのプロではない中野氏の手による「日本一の朝食」なのである。

 中野氏が朝食で着目したのが「だし」だ。スープをどのようにとるか半年間試行錯誤した。中華スープは丸鶏を使用し、ブイヤベースは本場の味を求め、仏・マルセイユまで試食に行った。和だしは最終的に高級と名高い「利尻昆布」に着地。利尻島にはグループホテル「アイランドインリシリ」があり、リーズナブルに入手できる手段もあったという。

 「だし昆布」といえば、京都で1日1万円分くらいの量を使う料亭もあるが、同ホテルでもピーク時には、1回の朝食で5000円分以上は用いるという。仕入れが安価なので5000円といっても数量は相当だ。

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