損害保険料算出機構が、火災保険の参考純率を全国平均で10.9%引き上げると発表しました。金融庁の認可が出れば、火災保険は2022年1月から値上げされる見通しです。
火災保険の値上げは、この4年間で3度行われてきました。なぜこのタイミングで値上げとなるのでしょうか。その背景には「大規模な自然災害」と「築年数の古い建物」の両方が増えたことが挙げられます。これまでの動きを解説していきます。
火災保険や自動車保険の保険料率は「純保険料率」と「付加保険料率」から構成されています。参考純率とは、損害保険各社でつくる「損害保険料算出機構」が算出する、純保険料率の目安です。これまで顧客から払い込まれた保険料や支払われた保険金、支払件数などの統計をもとに、参考純率は算出されます。
ただし参考純率は、純保険料率を決める際の参考数値に過ぎません。参考純率をそのまま純保険料率に採用する保険会社もあれば、商品の設計に応じて修正した数値を採用する保険会社もあるなど、対応は異なります。
損害保険料算出機構は、参考純率が「合理的・妥当・不当に差別的でない」を満たす適正な数値であるかを毎年検証しています。近年は台風や豪雨など風水災の影響で、火災保険の支払保険金額と支払件数が増加していたため、参考純率の見直しが行われました。
参考純率は、18年に全国平均で5.5%、19年には4.9%それぞれ引き上げられました。今回の全国平均10.9%引き上げという改定率は過去最大です。わずか4年間で3度の値上げが行われたうえに、上昇率は合計で2割を超えました。
実際の改定率は、建物の構造や都道府県などに応じて異なっており、引き下げられている場合もあります。
例えば、築5年以内のM構造(鉄筋コンクリート造等の耐火構造を持つ共同住宅)における参考純率の改定率は、宮崎県が+30.5%で最大であるのに対し、最小は山形県の▲4.7%です。
最も改定率が高いのは、沖縄県・築10年以上・H構造(木造など)の+36.6%、最小は山口県・H構造・築5年以内の▲13.8%です。
21年6月現在、損害保険会社各社の対応は発表されていません。しかし、18年と19年の見直し時は、相次いで火災保険料の値上げを行っています。そのため今回の改定でも、22年に1月から火災保険料を引き上げると想定されます。
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