ジョブ型人事で才能を開花 従来と異なる「ヒトの育て方」の成功ポイント職能型との違い(1/2 ページ)

» 2021年07月05日 07時00分 公開
[内藤琢磨ITmedia]

旧来の職能型とジョブ型の違い

 程度の違いはあるものの、多くの日本企業が任せる仕事によって処遇が決まるジョブ型人事制度に関心を寄せている。話題となっている給与のランク付け(ジョブグレード制)や雇用の在り方以上に旧来の職能型人事制度とジョブ型人事制度の違いが鮮明なのは、ヒトの育て方だろう(図表1)。

photo (図表1)職能型制度とジョブ型制度のヒトの育て方の違い。キャリア形成責任を会社から本人にエンパワメントするなど、根本的な違いがある=図表は筆者作成

 伝統的な日本型人材マネジメントである職能型人事制度で、キャリア形成はほぼ会社に委ねられている。異動・配置転換は会社の指示によって行われ、さまざまな仕事をヒトに経験させ、会社の価値観、組織風土を染み込ませ、中長期的な視点で職務遂行能力の開発を図り、会社固有のゼネラリストに育成していく。自社独自の企業文化への理解や暗黙知が重視される前提なので、さまざまな職務経験をさまざまな上司の下でOJTと階層別研修を中心に行い、それを後進へと伝承させることで安定的な組織運営を可能としてきた。

 一方、ジョブ型人事制度でキャリア形成は個人の責任に帰属する。新卒一括採用がスタートという発想ではないので、基本はある職種・業務の専門家候補としてのキャリア形成となる。例えば社内の経理でキャリアをスタートさせるとすれば経理部門内での担当業務の幅を少しずつ広げていき、やがて資金調達、コーポレートファイナンス、あるいは本社、支社、海外拠点での経営・財務に自ら手を挙げてチャレンジし、キャリアアップする形となる。

 専門領域を広げ、リスキリングするために異なる職種にチャレンジすることもあるが、ジョブ型人事制度では報酬が減少することもあり得る。もちろん会社はリスキリングのための社内外の研修制度を充実させておくことが求められる。

 極論をいうと「厳しい競争環境を通じてヒトを鍛えていく」ことがジョブ型人事のヒトの育て方の基本思想だ(図表2)。

photo (図表2)厳しい競争を通じて人を鍛えていく仕組みが、ジョブ型人事の基本思想といえる

 自らの専門性を社内外にあるリスキリングの研修制度を活用し、社内公募制度があればそれに手を挙げて自らを鍛え、リスクを取りながら上位の仕事にチャレンジしていくことで自律的にキャリアをデザインする。ジョブ型人事制度では、OJT中心の職能型人事制度における人材育成と比較して、自らの意思さえあれば、チャレンジに対する機会獲得の範囲が格段に広いのである。

リスキリングを成功させるポイント

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