【バーティカルSaaS】 調剤薬局のDX化を進めるカケハシ 成長スピード1年で3倍の3つの要因(3/5 ページ)

» 2021年07月07日 05時00分 公開
[早船明夫ITmedia]

1. 法改正による業界変革の波

 まずは、調剤薬局業界にとって大きな影響を与える法制面での変更がありました。具体的には15年に厚生労働省が「患者のための薬局ビジョン」を打ち出しました。これは薬局が薬を出すだけではなく、患者さんに対し服薬指導や薬局外でのフォローをより拡充していくことを義務付けたものです。

 それによって調剤報酬の点数も変わってくるなど、いわば業界にとって変革が求められているタイミングでした。

 通常であれば、いくらいい製品を作れたとしても移管コストが大きく、薬局の根幹を担う基幹システムを一スタートアップに任せることは相当にハードルが高かったと思います。

 このような業界が変わらなければいけないタイミングで、カケハシが役に立てるサービスを提供できたことは大きかったと振り返っています。

2. ディスラプター(破壊者)ではなくイネーブラー(協力者)と認められる

 スタートアップの世界では、革新的なテクノロジーで破壊的に業界を変えていくアプローチが取られることもあるかと思います。ただ、われわれはそのようなディスラプター(破壊者)ではなく、医師や薬剤師の方などが本当に困っていることを解決し、ともに業界を良くするためのイネーブラー(協力者)でありたいと考えています。

 そのためには小手先のテクニックなどではなく、常にあるべき医療の姿は何か、国の医療のためには何をすべきかという自分たちにとっての“北極星"を見失わないようにしています。

 一営業パーソンであったとして、製品の良し悪しだけでなく、高い倫理観を持ってこの“北極星"を薬局業界の方に語ることができる組織であるということが重要だと日々考えています。

3. 誰よりも顧客のペインポイントを理解する

 もともと「Musubi」を開発する前に共同代表の中尾(豊)と400以上の薬局を回り、超大手チェーンの代表クラスの方から、店舗のパート薬剤師の方まで、つぶさにニーズを聞いて回りました。

 現場の方には「今思っていることを口に出しながら業務してください」などと無理なお願いしながら、業務を見せていただき、顧客像を自分たちの中に完全に落とし込みました。

 この徹底した顧客理解をなくして、現在の「Musubi」の姿はなかったと思います。今もカケハシにはもともと薬剤師だった方が多くいますが、業界の良き理解者であるように常に心掛けています。

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