サイバー攻撃が増えているが、日本は対処できるのか 不安と期待の動き世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)

» 2021年07月08日 07時54分 公開
[山田敏弘ITmedia]

「サイバー局」に期待

 そんな現状の中、日本でも少し期待できるニュースが報じられている。最近、警察庁が発表した「サイバー局」の設立である。

 6月24日、警察庁はサイバー局を立ち上げることを明らかにした。これまでサイバーテロ対策を担ってきた警備局や、サイバー犯罪を担当してきた生活安全局を、サイバー局に集約して対策を行っていく。サイバー空間ではテロも犯罪も区別がつきにくいため、一緒になって対応するのは当然である。22年の通常国会で、警察法改正案を提出する。

 さらに22年中に、地方機関の関東管区警察局で、サイバー局の指揮下に、警察の権限をもった捜査部隊「サイバー直轄隊」を設置することになる。全国の警察から捜査員を集め、サイバー分野で捜査権を持つことになる。これは画期的な動きであり、西日本にも同様の部隊ができるとの話もある。

 実は警察は少し前にも、これまでになかった積極的な「対策」を行っている。日本に滞在していた中国共産党員の男を、日本企業や大学などへのサイバー攻撃に加担したとして書類送検した。サイバー攻撃で中国共産党を名指しして、送検したのは初めてのことだ。男の背後には中国人民解放軍の日本担当ハッキング部隊「61419部隊」が存在し、16年〜17年に、JAXA(宇宙航空研究開発機構)や三菱電機、IHI(元・石川島播磨重工業)、慶應大学、一橋大学などを攻撃した。

 こうした対策は重要で、米国でも人民解放軍のハッカーらを指名手配したり、起訴したりして、大々的に中国を牽制(けんせい)してきた。北朝鮮からのハッキングに対しては、オバマ政権時代に初めて制裁措置を課している。

 最近では、ジョー・バイデン大統領やCISA(サイバーセキュリティ・インフラ安全保障局)の新しいトップであるジョン・イングリス氏が、国家の安全のため、政府や民間の垣根をとって一緒にサイバー攻撃対策をする必要があると主張している。この考え方は、日本では安全保障と経済が一緒になった経済安全保障として注目されていて、今後は、すべてが一体となって攻撃者に対策していくのが潮流になるだろう。

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