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「ブラック校則」で波紋 今の日本社会で、ツーブロックは本当に就職で不利なのか「異形」か「個性」か(2/5 ページ)

» 2021年07月12日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

 「会社から受けた業務指示の範囲内で“主体”的に業務へ取り組み、未経験分野や転居を伴う勤務地への異動であっても果敢に“チャレンジ”し、他社員たちと“協調”しながら、与えられた担当職務を“誠実”に遂行し、周囲との和を乱すことなく“コミュニケーション”が卒なく図れる人材」――経団連が求める人材像は、このようにまとめられます。

 つまり、「主体性」や「チャレンジ精神」を重視するといっても、既成の枠をはみ出す思い切った行いを推奨するのではなく、あくまで会社から指示された領域に収まる範囲内で積極的に動くことを意味していたように思います。こうした定義からは“従順さ”に欠けた“出る杭”となれば打たれてしまい、“出過ぎた杭”になれば引き抜かれ左遷されてしまうような、“出すぎない美徳”が求められる組織がイメージできます。

 実際に、採用選考において各社はこぞって自社組織の色に染まりやすそうな原石を探そうと努める傾向にあり、黒髪や地味な色合いのリクルートスーツといった画一的なスタイルに素直に合わせられるような“従順さ”を有することが、求める人材像における共通の前提条件だったといえます。

 中には、「うちの職場には、そこまで“従順さ”を求めるような息苦しさはないよ」という人もいるかもしれません。当然ながら会社風土によって強弱はあると思います。しかし、大胆な行動で組織の常識を覆す活躍をみせる「半沢直樹」のようなキャラクターが人々を強く引き付ける背景には、多くの企業において、社員に“従順さ”を求める窮屈な風土が潜んでいることを示しているといえるのではないでしょうか。

採用活動に変化の兆しも

 ところが、昨今の採用活動を見ていると、企業のスタンスに変化を感じるようになってきました。黒髪や地味な色合いのリクルートスーツを求めるような、画一的なスタイルから脱却しようとする傾向があちらこちらで見られます。

 P&G社のブランド「PANTENE(パンテーン)」では、19年に就職活動生が自分らしい髪で就職活動を行うことを応援する「#HairWeGo さあ、この髪でいこう。」キャンペーンを行いました。このキャンペーンには当時、経済産業省やIBM、本田技研工業、東京海上日動火災といった名だたる企業139社が賛同しています。

出所:「PANTENE」公式Webサイト

 他にも、就職説明会や面接時の参加条件として、あえてリクルートスーツを禁止にするなどの動きも見られます。これらのように、画一的なスタイルを回避する動きの背景にあるのは、企業が必要とする“人材像”そのものの変化です。

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