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コマツ小川啓之社長に聞く海外戦略 スマートコンストラクションを武器にさらなる市場を開拓コマツ小川啓之社長の野望【後編】(1/4 ページ)

» 2021年07月16日 09時30分 公開
[中西享, 今野大一ITmedia]

 コマツの売り上げの約9割は海外。建設機械車両の世界の生産拠点は81カ所、販売拠点数は58カ所にわたる日本を代表するグローバル企業だ。

 同社の海外進出の歴史は古く、自動車メーカーが本格的な自動車輸出をする前の1955年にアルゼンチンに建設機械の一種であるモーターグレーダーを輸出するなど、早い段階から世界を視野に入れた生産・営業体制を構築してきた。小川啓之社長インタビューの前編「コマツ小川啓之社長に聞くDX戦略 世界の現場を自動化し、遠隔操作」では経営の基本線である「DX戦略」の行方を聞いた。後編では、同社の海外戦略について聞く。

小川啓之(おがわ ひろゆき) 1985年にコマツに入社、2010年に執行役員、14年にインドネシア総代表、18年に専務執行役員、19年4月から社長兼最高経営責任者(CEO)に就任。大阪府出身。59歳(以下、写真はコマツ提供)

売り上げの中国比率は約7%

――コマツは中国関連銘柄といわれていて、マーケットでは中国との関係がよく指摘されますが、全体に占める中国市場の比重はどれくらいですか。

 コマツは中国関連銘柄とよく指摘されますが、売り上げ全体に占める中国の比率は約7%でしかなく、中国銘柄といわれるのは事実とは異なっています。2010年のリーマンショック後に中国政府が4兆元のインフラ投資を行ったころは、外資メーカーのシェアが約7割を占めて、コマツも売り上げを伸ばすことができました。その後10年経過して現在は国内メーカーが約7割、外資メーカーが約3割となり比率が逆転しています。

 15年に国内の製造業の高度化を目指した「中国製造2025」が発表されました。そのころから、中国メーカーの比率が急速に高まりました。しかし中国マーケットの現在の外資メーカー比率である3割という市場規模は大きく、北米、欧州市場にほぼ匹敵する需要があり軽視はできません。

 中国市場でどうやってプレゼンスを上げていくかは課題です。コマツの戦略としては、この2年ほどは利益の大きい20トン以上の中大型油圧ショベルにリソースを集中する戦略を採っています。小型建機は負荷が軽い使われ方をするため、コンポーネントの耐久性や燃費などコマツの強みで差別化が図りにくく、収益性も良くないためです。

 また、他社と差別化を図るため、延長保証プロジェクトとして機械の品質保証期間を延長しています。通常の品質保証期間は1年ですが、エンジンなどキーコンポーネントの品質保証期間を5年、1万時間に伸ばすなどしています。これができるのはキーコンポーネントを自社で開発し生産しているコマツの強みがあるからです。

 延長保証プロジェクトはコマツが注力しているアフターマーケットのバリューチェーンビジネスにもつながります。中国で部品販売の売り上げの90%以上は20トン以上の中大型機械です。中国ビジネスでは建機の台数を追わずに、利益を追いたいと思っています。このほか、中国において車体の工場を集約することや、3月には中国に2つあった鋳造工場の1つを閉鎖しました。中国市場ではこうした構造改革とバリューチェーン全体での事業拡大を図っていきたいと考えています。

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