リテール大革命

「消費期限1日」の魚を販売するネットスーパー その仕組みは?相馬留美の「今そこにある商機」(4/5 ページ)

» 2021年07月19日 07時20分 公開
[相馬留美ITmedia]

ネットスーパーなのに大田市場に9区画を有する一大勢力

 他のネットスーパーとperrotのもう一つの違いが、市場内で加工し、そこから家庭へと直送できるという点だ。

 フーディソンは大田市場水産物部の仲卸店舗として子会社を登録している。仲卸業者として登録することで、市場から直送できる仕組みになっている。そのため、市場便で到着した鮮魚を、大田市場内で加工できる。加工センターが別の場所にある場合と比較すると、時間のロスが減るというわけだ。

大田市場での様子(出典:フーディソン)

 もともと創業者である山本徹CEOが、東日本大震災を機に、鮮魚の流通を変えたいという思いから起業したが、ITの仕組みだけでは鮮度の高い商品の配送は実現できなかった。市場出身者を採用して、市場の仕組みを理解したうえでシステムを構築することで、現在の姿になったという。今では魚ポチは全国2万店の飲食店と契約しており、大田市場に9区画を有する一大仲卸になっている。

 ただ、ネットスーパーの最大のネックは配送費だ。perrotの配送料は1回280円と比較的低いが、この価格にはこだわりがある。彼らの目指すものが、「家庭と生産地がダイレクトでつながること」であるからだ。

 「僕らは生鮮流通。買い手からするとほしい商品がほしいときに手に入り、生産者からすると水揚げした魚を最もいい場所に届ける、それを可能にする世界を作りたい」と伊藤氏は言う。「稼げなくて跡継ぎのいない漁師さんが多いことが社会問題になっています。売り先に困らず商売が成り立つようになれば、持続可能な流通が可能になる。そのために自分たちが今はプレーヤーになっているだけなんです」

 ITを使い、配達の密度を上げる仕組みの導入も検討しているところだという。

 獲れたばかりの生鮮品を、できるだけ早く消費者に直接送る仕組みが実現できていなかったのは、「情報化が難しい」ためだった。フーディソンはこのつなぎ目になることを意識しているため、システムで稼ぐことを目指す。ビジネスモデルがそもそも通常のネットスーパーと異なるというわけだ。

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