話を植毛に戻そう。植毛手術は髪の毛を取り戻したい人の最後の手段だが、どのくらい伸びしろがあるのか。米コンサルのフロスト&サリバンは、中国の植毛医療サービス市場規模が20年で134億元(約2200億円)あり、25年には378億元(約6400億円)、30年には756億元(約1兆2900億円)に伸びると予想する。
上場申請した雍禾医療が20年に施した植毛手術は51.6万件で、2億5000万人の薄毛マーケットの0.21%に過ぎないことから、今後の成長に期待する声も多い。
ただし、植毛は現時点では皆が思うほどもうかるビジネスではないようだ。
雍禾医療の粗利益率はこの3年70%を超えているが、純利益率は一桁にとどまっている。目論見書を見ると、広告宣伝費用が売上高の50%前後を占めており、医師や看護師の人件費以上に重しになっていることが分かる。患者1人が支払う治療費は約2万8000元(約48万円)と推定されるが、患者1人を獲得する費用も1万元(17万円)以上かかっている計算になる。
雍禾医療も今は映画やテレビでCMを流し、植毛手術に対する認知度を上げるステージにある。薄毛に悩んでいる人がそこかしこにいるというデータは多くの調査で示されているが、植毛手術に踏み切るほど気にしている人、金銭的な余裕がある人がどの程度いるかは、業界も手探りのようだ。
早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。 最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」 (小学館新書)。twitter:sanadi37 。
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