トランプ政権下で実行された米上場中国企業の規制強化は、バイデン政権下でも覆っていない。2020年末にはトランプ前大統領令に基づき、チャイナ・ユニコム香港、チャイナ・モバイル、チャイナ・テレコムのADR(米国預託証券)上場廃止がアナウンスされ、21年1月にこれらのADRは取引ができなくなった。他にもトランプ前大統領が中国軍と関係があるとみなす企業への投資を禁じるなど、半年前ごろから証券市場にも米中摩擦の影響が色濃く反映されてきた。
今回の騒動で最も不憫(ふびん)な立場なのが、米国市場にも展開している中国企業だろう。これら中国企業は米国から締め付けをくらい、今回は中国からの締め付けによってダメージを受けているという、まさに板挟みの状況だ。
7月で最も大きな影響を受けたのが、中国における配車サービスのディディと個別指導サービスのTALエデュケーション、そして英語教育のニューオリエンタルエデュケーションアンドテクノロジー(EDU)である。これらのADR価格は大幅に下落しており、ディディは前月比で約42%下落、TALエデュケーションは前月比で76.2%下落、EDUも64.2%下落と大幅安の状況。ほかにもITテック系と教育系を中心に幅広い銘柄で売りが目立った。
米国に上場する中国大手企業の株価指数である「NASDAQ Golden Dragon China Index」は、ここ半年でピークから43.58%下落した。米国に上場している中国企業の時価総額は、全体でおよそ84兆円が消失したとも一部で報じられており、これはちょうどアリババグループやテンセントグループの時価総額に匹敵する規模である。
足元では割安になった中国ADRを拾おうと買い向かう動きもあるが、ADR特有のリスクもあり、以前にもまして戻りは弱い状況になっている。そもそもADRとはどのような商品なのだろうか。
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