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» 2021年08月20日 07時00分 公開

明日から使える! 行動経済学をマーケティングに生かす「4つの類型」現場で使える行動経済学【後編】(2/3 ページ)

[吉村哲樹,ITmedia]

行動経済学の理解への第一歩は「類型化」

 行動経済学を実務に落とし込む際、もう一つのハードルとして、個別の理論の多さがある。

 現在の行動経済学はさまざま研究者がそれぞれ独自に理論を打ち立て、それらが体系化されないままばらばらに林立しているため全体像が把握しにくい。初学者にとってはこれが障壁となる。

 「例えばマーケティングの第一人者であるフィリップ・コトラーは、マーケティングのプロセスを『4つのP』というとても分かりやすい体系にまとめ上げました。これによりマーケティングが多くの人にとって身近なものになったのですが、残念ながら行動経済学にはこうした分かりやすい体系が今のところありません」

 一方、楠本氏によればビジネスの実務において行動経済学を活用するためには、必ずしも各理論に深く精通する必要ないという。

 「研究者や専門家のように理論を深く学ばなくとも、ビジネスへの適用は可能です。従って、企業のマーケッターが独学で行動経済学を学んで自身の業務に生かすことも十分可能だと思います。むしろ理論の学習より、各理論を実践に落とし込む際の運用に時間を割くべきだと思います」

 そこで楠本氏は、まずは行動経済学の大枠をつかむために、マーケティング領域で使えそうな各理論を以下の4つのカテゴリーに分類・整理することを提唱する。

(1)限られた情報で短絡的に判断してしまう

 人は物事を判断する際に、あまり深く考えずに自身の個人的な経験や記憶を基にぱっと判断する傾向がある。これを行動経済学では「ヒューリスティックス」と呼び、関連する理論としては「バンドワゴン効果」「ハロー効果」「希少性の法則」「ジンクピリチオン効果」などがある。

(2)得することよりも「損しないこと」を過大に重視してしまう

 人は、たとえ長期的に得をすることが分かっていても、短期的に損をする場合はそれを回避する傾向がある。行動経済学では「プロスペクト理論の価値観数」として説明されており、「損失回避性」「保有効果」「現状維持バイアス」といった理論が提唱されている。

(3)何が基準になるかで評価や判断の内容が変わってしまう

 物事を評価する際、人は絶対評価よりも特定の基準をベースにした相対評価を重視しがちなので、その基準によって全体の評価や判断が大きく左右されてしまう。こうした傾向に関する理論としては「参照点依存性」「アンカリング効果」「プライミング効果」「サンクコスト効果」などがある。

(4)見せ方や並べ方を変えるだけで判断が変わってしまう

 人は複数の物事を比較評価する際、それらの見せ方や並べ方によって評価や判断の内容が大きく左右されてしまう傾向がある。こうした傾向を扱った理論としては「ポジネガフレーミング」「決定回避の法則」「おとり効果」などがある。

 楠本氏は「上記の4つのカテゴリーにそれぞれ個別の理論がぶら下がる形に整理することで、少なくともマーケティングに関係する理論については分かりやすく整理できるのではないかと思います。こうしてまずは大枠をしっかり把握することが、行動経済学を理解するための第一歩になるのではないかと考えています」と説明する。

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