「中田翔システム」は企業の知恵なのか 問題社員は「新天地」に飛ばしてリセットスピン経済の歩き方(1/6 ページ)

» 2021年08月24日 09時51分 公開
[窪田順生ITmedia]

 モヤモヤしているプロ野球ファンも多いのではないか。

 日本ハムファイターズ在籍時、暴行問題で無期限謹慎処分を受けていた中田翔内野手が、巨人にトレード移籍をした途端、すぐさまに試合に出場、特大ホームランを打ったのだ。

 「本人も深く反省しているのだからいつまでもゴチャゴチャ言うな!」「最近の日本は失敗した人間を叩きすぎだ! 再チャレンジを応援しろ!」という声も聞こえてくるが、一般企業で暴力事件を起こせば数カ月の停職になることも多く、悪質な場合などは懲戒解雇につながることもある。

暴行問題で無期限謹慎処分を受けていた中田翔内野手が巨人に

 そんな“庶民ルール”は一流アスリートには適応されない、と言わんばかりの特別待遇に、「素直に応援できない」「しっかりと謹慎してから復帰すべき」という厳しい意見が相次いでいるのだ。例えば、お笑い芸人の有吉弘行さんもラジオ番組『SUNDAY NIGHT DREAMER』でこんな“皮肉”を述べている。

  「(TKO)木下(隆行)さんも、ペットボトル投げつけた後すぐ太田プロ来ればよかったんだよな。すぐ出られるだろ。謹慎しなくても。宮迫(博之)さんとかもそうじゃないの? 闇営業して次の日、太田プロ来てたら、もう出れたじゃん。“中田翔システム”だったら。後輩ぶん殴っても、球団うつったら出れるって……」 

 ただ、芸能界の「問題人物は徹底的に干す」というほうがマイノリティーで、日本社会では「問題人物は新天地でリセット」という「中田翔システム」を採用している組織のほうが圧倒的に多い。

 実際、サラリーマンの皆さんならば一度や二度、素行不良ながら仕事はデキる人が、何かやらかしてしまった際、重い処分をされることなく、転勤や異動でウヤムヤにされるケースを見たことがあるはずだ。

 球団を移ったとはいえ、中田翔選手もこれと基本的な構造は変わらない。クビになったわけでもなければ、減俸になったわけでもない。無期限謹慎という処分も巨人に移った途端にチャラだ。プロ野球界という巨大組織で見れば、「不祥事を異動でウヤムヤにした」以外の何者でもない。

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