これこそが、先ほど中田翔システムを日本企業の知恵だとした理由だ。「和を以って貴しとなす」で、さまざまな人間トラブルにフタをしがちな、なんとも日本人らしい組織マネジメントではないだろうか。
もちろん、中田選手の巨人移籍にモヤモヤしている人が多いように、これを「知恵」と呼ぶことに違和感を抱く人も多いだろう。いくら取り繕ったところで、問題先送りであることは間違いなく、事態を悪化させる恐れがあるからだ。
つまり、今はどうにかやり過ごすことができるが、中長期的に見ればまだ同じような問題が繰り返したり、さらにひどいことが起きたりするのだ。
中田選手の件で言えば、プロ野球界でまだまだ同じような暴力事件が続くということだ。ご存じのように、スポーツ界では体罰撲滅をうたいながらも、定期的に暴力事件が起きている。暴力的な指導、暴力カルチャーの中で強く成長してきた者は、無意識にそれを「再現」する。それは「病」のようなものなので、一朝一夕では止められない。
中田選手がそうだとは言わないが、彼の「後輩いじり」は以前からファンの間で問題になっていた。間がさしたとかではなく、中田選手のこれまでの野球人生の中で体に染み付いてきたものなので、巨人軍への「部署移動」によって、いきなりきれいさっぱり消えるものではないのだ。
なぜ「頼れる兄貴分」として後輩からも慕われていた中田選手が暴力を振るうのか。ここに至るまで、なぜ誰も中田選手の素行を諌(いさ)める人がいなかったのか。
「子どもたちの手本に」「子どもに夢を与える職業」だとうたってきた球団はもちろんのこと、日本野球機構としても、第三者調査が関係者への聞き取りなどをして、この問題をしっかりと検証すべきだ。
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