「中田翔システム」は企業の知恵なのか 問題社員は「新天地」に飛ばしてリセットスピン経済の歩き方(2/6 ページ)

» 2021年08月24日 09時51分 公開
[窪田順生ITmedia]

「中田翔システム」が当たり前に

 では、なぜ日本の組織ではこのような中田翔システムが当たり前になっているのか。結論から先に言ってしまうと、「人間的に難ありでも結果を出す人間」を組織につなぎとめておくための「知恵」という側面が強い。

 一体どういうことか説明していく前に、まずは「人間的に難ありでも結果を出す人間」とは何かということから整理していこう。

 『「オレは絶対に悪くない!」という“他責おじさん”が、なぜ出世するのか』の中で詳しく紹介したが、国内外のさまざまな調査によって、「組織」というのは、誰にも優しくて人間的に素晴らしい人よりも、弱い者をイジメたり、部下を精神的に追い詰めたりといった「人間的に難あり」の人のほうが、権力を握っていく傾向があることが分かっている。

 例えば、オーストラリアのボンド大学の研究チームの調査でも回答者240人のうち64.2%が、「職場で性格の悪い上司ほど責任を取らされることがなく、横柄な方法で昇進する」との見方を示している。

日本会社で中田翔システムが当たり前に?(提供:ゲッティイメージズ)

 これは日本も同様で、「憎まれっ子、世にはばかる」のことわざ通り、「性格の悪い上司」のほうが圧倒的マジョリティーとなっている。19年6月、「エン転職」を運営するエン・ジャパンがユーザー1万1286人を対象に調査したところ、なんと85%が「困った上司のもとで働いたことがある」と回答。その困った点の代表は「人によって態度を変える」。人として大事な何かが欠落した、典型的な“ヒラメ上司”である。

 つまり、世の中というのは、後輩に暴力を振るうけど大黒柱としてチームを引っ張るとか、パワハラや職場イジメをするけれど、同期より早く出世階段を駆け上がっていくなどの、「人間的に難ありでも結果を出す人間」が実はかなり多く存在しているのだ。

 当たり前だが、こういう人たちは対人トラブルを起こしがちだ。自分よりも立場の低い後輩や部下に対してナチュラルボーンで横柄ということは、そこに悪意がなくてもイジメやパワハラを誘発しやすい。中田選手のように、自分では面倒見がいい先輩だと思って「いじり」をしているうちに「いじめ」になってしまうのだ。

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