いうまでもなく、Sansanは国内屈指のSaaSプレイヤーであるが、名刺管理を起点としたCRMプロダクトであるSansanに対し、従業員のピアボーナスを実現するサービスであるUniposとの提携は“飛地"と見る向きもある。
ここでは田中氏の言葉からその背景を伺っていく。
――—Sansanとの事業提携の背景はどのようなものでしょうか
田中氏 Sansanとは昨年12月のマイノリティー出資以前から事業面において緊密な関係を持っていました。Sansanは10年前には誰も気づいていなかった「名刺は組織の資産である」という価値にいち早く着目し、SaaSを通じてARR100億円以上の事業規模に成長をさせてきた圧倒的な実績があります。
私たちが提唱する「感情報酬」も同様に「まだ多くの人が気づいていない本質的に価値があるもの」という構図があると考えており、この価値をUniposを通じて社会に実装していく点で、共通性とシナジーがあると考えています
今後、Uniposの事業進捗に応じてSansanの子会社化が検討されていますが、連結子会社となった場合でも上場を維持し、経営の独立性を保ったまま事業の運営を行うことを想定しています。
* Sansanは5月19日付けの適示開示情報で「Uniposが一定規模のサービスに成長した場合には、将来的にFringe81社を連結子会社化する」旨の公表を行っている。
私たちは長年インターネット広告事業を主体として運営してきたこともあり、SaaSビジネスにおける経験はまだまだ足りません。そのような中で、タッグを組む相手としてはこれ以上にない企業だと考えています。
Sansanが高く将来性に期待し、田中氏が人生を賭けて取り組むという「感情報酬」の価値、そして、Uniposの今後の可能性は。
――—Uniposが提供する価値とはなんでしょうか。
田中氏 もともと、Uniposが立ち上がりはじめた際はメルカリやRettyなど、急成長で社員数が増加している企業において利用が増えた経緯がありました。
一方で、新型コロナウイルス禍も2年目に入ってくる中で、大企業の導入が増えてきました。リモートワーク環境において、当初はZoomやSlackといった「インフラ」に近いツールの導入が進みました。
その後、お互いに顔が見えなくなった組織を運営するにあたって、Uniposのような社員間をつなぐサービスの需要が急速に高まったことを感じています。
――—感情報酬というアプローチは独自性が強いサービスだと感じていますが、海外などでは事例があるのでしょうか。
検索サイトで「ピアボーナス」と検索するとほとんどがUniposであるように、国内においては唯一取り組んでいる企業だと自任しています。
海外ではどうだろうかと考え、グーグルの組織カルチャーを解説した書籍『How Google works』の中に、ピアボーナスという表現があったため、グーグルのCFOが来日した際に、実際の取り組みを伺いました。
彼らの取り組みは、感謝したい相手に周囲が気づかない形で1万円程度のボーナスを送るという運用をしており、私たちが思い描いていたものとは少し異なります。
私たちは感情報酬の価値は他人にもオープンになることで増幅されると考えています。単に感謝を伝える、受け取るということだけではなく「同じ組織内の仲間の状況を知りたい」という欲求にも応える役割があります。
この隠れた本質的なニーズをUniposの利用状況から確信しており、大企業での導入も増え、8万人いるユーザーのMAU(月間アクティブユーザー)は約80%を超えるなど、活発な利用がその価値を裏付けていると考えています。
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