ゆで卵は簡単につくれるのに、なぜ「エッグマイスター」は3万5000台も売れたのかあの会社のこの商品(2/6 ページ)

» 2021年09月08日 08時00分 公開
[大澤裕司ITmedia]

おいしいゆで卵は、ただゆでるだけではできない

 アピックスインターナショナルはデザイン家電や生活雑貨の企画・開発・販売を行っており、エッグマイスターのような調理家電のほか、加湿器、暖房機、扇風機、サーキュレーターなどを手がけている。

 エッグマイスターが企画されたのは今から3年近く前のこと。社内でこんな話が出たことがきっかけになった。

 「ゆで卵をつくるのって面倒臭いよね」

 簡単につくれるとはいえ、好みの固さに仕上げるにはゆで時間を調整しなければならないし、夏場につくるとキッチンが暑くなる。「面倒臭い」のひと言は、こうした側面から発せられた。

 「私はその場にいなかったのですが、開発メンバー間の会話でこの話が出ました。この話を聞いたとき、確かに面倒臭いと感じました」

 こう話すのは商品開発部 商品開発兼広報担当の佐藤元紀氏。このひと言がきっかけで、面倒なゆで卵を自動でつくる商品が企画されることになった。

 ゆで卵をつくる専用家電は珍しいものではなく、すでに競合品がいくつか発売されている。競合品を調査し、その結果を踏まえて仕様を決めることにした。

本体内の水位線。「ゆでる」まで水を注ぐと、一般的なサイズの卵であれば先端がやや露出する。下の「むす」は、後述する蒸し料理をつくるときに注ぐ水量を示したもの

 競合品を調べる中で分かったことの一つが、水蒸気で蒸してつくる方式が圧倒的多数を占めていたこと。本体空間内を100度以上の水蒸気で満せばいいことから機構が簡単にできるため、このタイプが主流になっていた。

 また、ゆで卵のことをいろいろ調べるうちに、お湯でただゆでるだけではおいしいゆで卵はできないことが分かる。これはどういうことか? 佐藤氏は次のように話す。

 「卵は100度以上のお湯でゆでると、白身に鬆(す)が入りボソボソとした食感になります。また、固ゆでしたときによく見られますが、黄身に80度以上の熱を加え続けると硫黄臭の発生と黒っぽい変色が起こり、味を落としてしまいます」

ゆで卵ケースを本体にセットしたところ

 白身と黄身ではおいしく仕上げるための温度が異なる。エッグマイスターの開発では、この問題を克服することにした。

 おいしいゆで卵をつくるポイントは温度制御。なぜエッグマイスターがゆでる方式を採用したのかというと、水蒸気で蒸し上げる方式は本体空間内の温度制御ができないからであった。ゆでる方式を採用することにしたので、水蒸気で蒸す方式ではおいしくつくることが難しい温泉卵も、簡単かつおいしくできることを目指した。

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