しかし、糖質ゼロのビールを作るのは困難だった。ビール、発泡酒、新ジャンル(第三のビール)は原材料も異なる。ビールの場合、水・ホップ・酵母を除いた原材料のうち、麦芽の比率が50%以上であることが法律で定められている。
麦芽が多いぶん、ビールならではの味わいが出るが、同時に含まれる糖質も多くなる。だからこそ、発泡酒、新ジャンルでは定番となりつつある「糖質ゼロ」が、ビールでは長らく出現しなかった。
「ユーザーを満足させるためにも、糖質ゼロビールを作る」と決めたものの、サントリーでも技術開発がなかなか進まず、醸造家チームの間では「諦めるか」という話も出ていたそうだ。
「それでも完成にこぎつけたのは、発案者である若手醸造家の熱意ゆえです。その情熱に周りも引き込まれて、彼の頭のなかにあった『こうすればもっとおいしくできるはずだ』という構想を、とうとうかたちにすることができました」(稲垣氏)
企業によっては上層部が開発中止の判断を下すこともありそうだが、風通しのよさと、仲間の思いを重視する企業姿勢も、完成にこぎつけた一因だろうと稲垣氏は話す。
稲垣氏はこれまで2度の産休・育休を経験している。2度目の産休明けで担当したのがパーフェクトサントリービールだ。
「変に遠慮されることもなければ、甘やかされることもないので、『女性だから』という壁を感じたことはないですね。
私たちマーケティング本部と醸造家たちの研究部門とのコミュニケーションも密ですし、意見交換は常に行っています。年齢性別関係なく、思いがあるものを大切にする風土はメーカーとしての強みだと感じます」(稲垣氏)
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