台頭するハイボールやレモンサワー サントリーは「ビール」をどう売っていくのか仕掛け人を直撃(1/3 ページ)

» 2021年09月30日 05時00分 公開
[唐仁原俊博ITmedia]

前編では、「パーフェクトサントリービール」が誕生した経緯を紹介した。後編では、消費者の好みが多様化する中で、サントリーがビールをどのようにアピールしていこうとしているのかを取り上げる。


 総務省統計局の家計調査によると、2020年、1世帯当たりの年間支出額で見たとき、外食費(外での飲酒代含む)は大幅に減少した。

 外での飲食機会が減ったぶん、それを上回るほどではないが、家での消費は増えている。19年3月を100とすると、21年3月時点で内食率は113%に増加している。また、家庭内飲酒率は130%と、より大きな伸びを示している(食MAP調べ)。

家飲みが増えている中で、ビールをどう訴求していくのか(画像はイメージ)

 サントリーの機能系ビール類は、健康意識の高まりにより、20年2月から販売実績が前年超えする月が続いた。その意味で、今年4月に発売された糖質ゼロビール「パーフェクトサントリービール」は、トレンドを捉えたタイミングでの登場となった。

好調な滑り出しを見せている「パーフェクトサントリービール」(提供:サントリー)

 「アフターコロナの世界を考えても、人生100年時代といわれていますから、日常でできる健康対策として、機能系は間違いなく定着し、さらに拡大していくだろうと考えています。

 ただ、今の時代に求められるビールのあり方として、機能系は重要な要素のひとつではあるものの、それだけで全てのユーザーを満足させられるわけではありません。

 パーフェクトサントリービールは、お腹周りが気になりはじめる30代以上の層をメインターゲットに据えていますが、ビールに限らず、お酒に何を求めるか、どんなお酒を飲みたいかについては、コロナ禍以前より多様化が進んでいました」

 こう話すのは、パーフェクトサントリービールのブランドマネージャー、稲垣亜梨沙氏だ。

 コロナ禍は好みの多様化にさらに拍車をかける可能性もある。先ほど挙げた家計調査では、支出が最も伸びた酒類は「ウイスキー」で、前年比36.6%増となっている。

 さらに、「チューハイ・カクテル」が32.5%増、「他の酒(ウオッカ、ブランデーなど)」が25.2%増という状況だ。これらは、「発泡酒・ビール風アルコール飲料」の増加率16.8%を上回っている。また、「ワイン」(12.0%増)、「焼酎」(10.2%増)も健闘している。

コロナ禍で消費動向はどう変化したのか(出所:経済産業省公式Webサイト)

 そして、もともとの消費量の違いもあるが、ビールの伸びはそれらより低い。

 ウイスキーの伸びが大きいのは、低カロリー・低糖質という特徴が、急激に高まった健康志向とマッチしたから、という分析もある。

 パーフェクトサントリービールのように、機能系ビール含め、今後もヒット商品は登場するだろう。また、20年の酒税改正によって、ビールと新ジャンルの税率差が縮まったが、26年にはビールと発泡酒、新ジャンルの税率が全て同じになる。

 そうした追い風があっても、消費者の変化に対応しきれるのか。ビール業界は楽観視できるような状況ではなさそうだ。

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